INTERVIEW

第1回
オリンピアンから学ぶ、目的達成のための戦略思考
木村文子 × 鷲巣大輔
-前編-

SPODUCATIONでは、「難しい」と捉えがちな「MBA」のビジネススキルをスポーツフィールドを例に、誰でもわかりやすく解説するオンラインセミナーを開催。指導現場においても、暗黙知としてされている部分を形式知化し、スポーツ選手の持つアート的側面を、サイエンス的側面で紐解いていきます。第1回はゲストに東京オリンピック陸上競技女子100mハードルに日本代表として出場し、現在は広島大学大学院人間社会科学研究科に在学中の木村文子選手、講師に鷲巣大輔氏(グロービス経営大学院准教授/株式会社FP&A研究所代表取締役)を招き、「戦略」をテーマに対談を行いました。競技やビジネスにおいてよく耳にする「戦略」の概念を、木村選手の実体験を通じてMBA教員の鷲巣氏がわかりすく解説します。

 

 

鷲巣 まず最初に私の簡単な自己紹介をさせてください。私は社会人が経営学を学ぶグロービス経営大学院という学校で15年ほどMBA(Master of Business Administration)の講師をやらせてもらっています。実はグロービス経営大学院にはビジネスパーソンだけでなく、お医者さんや現役のアスリートの方も通われているんです。それはなぜかというと、MBAは普遍性があり、世の中に応用できることを広く扱っているからなのだと思います。

 一つひとつの事象は具体的でも、それを体系立て、抽象化しながら万人に置き換えられるように再現性を高めるのが経営学だと思っています。今日はMBAの経営学 x アスリートとして、オリンピアンである木村選手の思考を体系化し抽象化して、1割でも2割でも視聴されている皆さんの日常のヒントになるようなものを伝えることができればと考えています。

 本日のテーマが「戦略」ということで、この言葉は競技スポーツ、そしてビジネスのみならず、世間においても広く使われる言葉です。とはいえ、抽象的であり掴みどころがない。そこで本日はビジネスにおいて「戦略」がどのように捉われているか、参考事例を紹介しながら、木村選手とお話していきたいと思います。

 

戦略とは資源をいかに組み合わせて目的を達成するか

鷲巣 各社でマーケティング部門を育成・指揮してきた著者による書籍『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(音部大輔著)において、「戦略とは目的達成のために自分の持っている資源をいかに組み合わせるかの指針である」と定義づけられています。ポイントとなる「目的」と「資源」について、簡単な事例をご紹介しましょう。

 ある村に猪が現れ、農作物を荒らしています。これは村人にとっては解決すべき問題ですね。「資源」として村には動ける若い衆が10人ほどいるのですが、彼らは猟銃を扱えません。猟師を雇うとしても一人分しか資金はない。そんな状況でいかに資源を組み合わせて目的を達成するかを「戦略」という文脈で著者の音部さんは語っています。

 猪を退治する、猪を追い出す、飼いならす……など、何を目的とするかによって創造性が出てきます。資源に関して追求してみると、10人の男衆は地元の人間で地理を知り尽くしていて、家には鍋と釜がある。つまり、鍋と釜でかき鳴らすことで、猪を見晴らしのよい場所へ誘導することができるわけです。そこに猟師一人を配置しておけば猪を退治することできる。これが資源をどう解釈して目的を達成するかの「戦略」なのです。

 木村選手がものすごく高い目標を達成するために、いかにしてご自身が持っている資源を解釈して達成してきたのかを聞いてみたいと思います。前置きが長くなってしまいましたが、木村選手よろしくお願いいたします。

木村 こちらこそ、よろしくお願いいたします。

 

木村選手による資源の解釈と捉え方

鷲巣 木村選手は本当に輝かしい経歴をお持ちなのですが、僕が興味を持ったのが、木村選手の所属校についてです。高校、大学と「ザ・強豪」ではないところを選択されたとのことなのですが、その判断の理由を教えてもらえますか?

木村 高校を選択するときにすでに教員になるという目標がありました。陸上競技を続けながらも、勉学ができるところを視野に入れていました。また県の強化合宿で一緒だった選手たちの中で、同じ高校を志望する仲間がいたことも心強かったです。

鷲巣 スポーツの強豪校は設備が整っていて、コーチ・スタッフが充実し、学校としてのバックアップもあります。そんな資源がもしかしたら足りなかったのではないかと想像しますが、その点はいかがでしたか?

木村 部活動の顧問の先生が陸上専門ではなかったので、たしかに「資源が整った」環境ではなかったのかもしれません。でも、先生が陸上の専門家ではなかったがゆえに、対等な目線で一緒になってトレーニングを決めていくことができました。

鷲巣 もし強豪校に行っていたら、トレーニングメニューがすでに確立されていることから、「やるだけ」になっていたかもしれませんね。考えることを怠っていた可能性もあると。

木村 そうですね。資源が整った強豪校に行っていたら、これほど長く競技に関わっていなかったかもしれません。

Getty Images

 

成果を上げる思考法とは?

鷲巣 この「考える」ということに関して。例えば漫然と考えていてもダメだと思いますが、成果が上がる考え方になるような工夫はされていたのですか?

0
ここから先はプレミアム会員限定コンテンツです。
アカウント登録をしてください。
今ならプレミアム会員に新規登録で14日間無料!
アカウント登録 ログイン

記事に対するコメント

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。

関連記事