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【4/16~18 biz Festa Preview#06】 ビジネスパーソンの目標達成力向上が、子どもの自立を加速させる/原田隆史

「SPODUCATION」では 4月16日(金)~18日(日)の3日間、ビジネスパーソンに向けたオンラインイベント「biz Festa」を開催する。スポーツで培われたノウハウが、ビジネスでも応用できることを紐解くべく、ビジネス書のベストセラーを生み出す有名著陣とアスリートが激論を交わす。数多の企業のビジネスパーソンを指導してきたスペシャリストたちと、トップアスリートの邂逅は、どのような“解”を生み出すのか。現状打破に日々を捧げる現代ビジネスマンに向けた大型オンラインイベントを前に、“ビジネスサイド”のゲストのインタビューを紹介していく。

『一流の達成力 』フォレスト出版/203ページ/1540円(税込)

 

個人、組織において最良の結果を生むプロセスとして欠かせないのが「目標設定」法だ。2011年の女子サッカー日本代表のなでしこジャパンは、「世界一」という有形の目標を掲げると同時に、同年3月11日に発生した「東日本大震災」の被災者にエールを送るという無形の目的意識を持って臨んだという有名なエピソードがある。成果にコミットする「目標設定」法は千差万別ながら、ユニクロ、キリンビール、野村證券といった企業500社が、自社の研修・人材育成として採用するのが、メジャーリーガー大谷翔平が実践した「原田メソッド」だ。大阪の公立中学陸上部を7年間で13回の日本一に導き、10万人ものビジネスパーソンを指導してきた自立型セルフマネジメント「原田メソッド」の開発者・原田隆史氏に、スポーツの社会的価値と、ビジネスに与える影響力について聞いた。

 

荒れた環境からの克服は「自立」にあり
7年で13回の日本一に

私は20年間、大阪市内の公立中学校に体育教師として勤務していました。荒れている学校の子どもたちは、心を成長させる勉強や生き方の指導をきちんとしないと話を聞かないのです。私は陸上競技の部活動が大好きでしたから、小中高大学と陸上競技一筋で来ました。教員のスポーツチームをやりながら、子ども達の部活動に活路を見出しました。その部活動の中で、最初はただチームを強くしようと考えていたのですが、部活動だけで結果が出たとしても、学校で暴れたり言うことを聞かなかったりしたら意味がありません。部活動教育の中で、人間教育をしなければならないということに気づいたのです。そこに心理学や座禅などのポイントを入れた結果、出てきた答えが「自立」だったのです。

家庭にも問題を抱える子どもたちの教育現場を目の当たりにし、子どもたちと一緒に考えたことが、「スポーツの全国大会で1位になってやろう」ということでした。それを達成すれば、厳しい生活環境にあったご家庭のお子さんであっても、私立高校に特待生として授業料免除でいくことができる。それが35歳からの私の責任とビジョンになりました。

子どもの中には家庭環境に問題を抱え、「早く家を出て自立したい」という子が大勢いました。「僕も真剣に陸上をやるから、先生も真剣にやってください」と言われたほどです。陸上部で向上心を持って成績を残す生徒を増やし、「自立型人間」を育てることで、学校だけでなく地域や家庭の環境も良くしていこう、という壮大な教育の挑戦に臨んだのです。

そこから7年間真剣に取り組み、紆余曲折もありましたが、結果としては日本一を13回達成することができ、日本中から注目されるようになりました。そこから教育方法についてたくさんのご依頼をいただくようになり、ついには学校以外の方々からも「話を聞きたい」と言われるようになり、自立型セルフマネジメント「原田メソッド」というものが確立されていきました。原田メソッドを取り入れたチームでは、早いところでは2年、遅いところでも3年で、各都道府県の大会でトップを取るという成果がでてくるようになり、結果、荒れていた学校が落ち着いていきました。いかに部活動や学校教育の中で「自立型人間」を育成すればいいのかということを、20年間研究し続けた成果が全国規模で芽生え始めたのです。

自立型セルフマネジメントを家庭に還元
子どもの成長に影響

「原田メソッド」が全国に広まって行った時に、各業界の社長から「これを企業でもできますか?」と言われました。様々な取材が入ったのですが、そこで実際にやってみると、見事に結果が出るようになりました。企業の人材育成として実践してみると、ビジネスとして収益も上がるのですが、「原田メソッド」は、もともとは教育メソッドでありますから、ビジネスパーソンのお子さんも「自立型人間」に育つようになったのです。私は企業研修としてビジネスパーソンを対象に原田メソッドを指導しに行ったのですが、例えば不登校の子が学校に行くようになったり、子どもの学力が上がったり、スポーツで日本一になったりしたわけです(笑)。

噂がさらに広まって、ついには海外の人からも声がかかるようになりました。今は世界25か国に展開しています。「自立型人間の育成」ということで、さまざまなスポーツチームや企業からも声がかかりました。今では「家庭」「学校」「企業」「海外の教育」「スポーツ」「芸術・芸能」といった多分野において、私の自立型教育が取り入れられている状況です。

今はインターネットでビジネスブレイクスルー大学の教授や全国の不登校生徒を支援する「クラスジャパン小中学園」の校長もしています。対面型の教育もしますが、インターネットで大学生、社会人、不登校の小中学生の教育をしているのです。

 

思考と結果の結びつき
見えないものを育てる大切さ

パフォーマンスというのは、「心」「技」「体」そして「私生活」の4つから成り立ちます。私は、当初メンタルトレーニングというのは、「気合と根性」だと思っていました。ところが違うのです。

例えば目に見える世界と見えない世界を氷山の上下で考えてみましょう。氷山の上の方(現実世界)では、活動や方法が「結果」を生み出している、と考えられています。結果が悪かったらPDCAサイクルを回して方法を変えてみる、ということですね。
しかし、AIやITといったデジタル領域が社会で広がりを見せると、目に見える方法や結果の下の部分、氷山の下にある思考、心、マインド、メンタルが注目されてくるようになりました。結果を生み出しているのは人間の行動ですが、その行動を生み出しているのは氷山の下にある「思考」である、ということです。

そしてその「思考」に影響するのが「感情」なのです。そして感情は、大別すると「不安」と「自信」に分けられる。不安や恐怖の感情で行動すれば失敗するし、自信を持って行動すれば成功する、ということです。ラグビーの五郎丸歩選手がルーティンを重要視するのはこれにあたります。氷山の下にあり、見えない「思考」をいかにして表面に持ってきて行動として指導をするか、ということが全国のスポーツ指導者の目指すところなのだと思います。

その中でコーチングなどいろんな指導法・アプローチ方法がありますが、私の方法は思考と感情をトレーニングする「原田メソッド」として評価をいただいているのです。その理由は、目標達成するための行動計画を明確にする「オープンウィンドウ64」、 目標達成のシナリオを描きモチベーションを高める「目的・目標設定用紙」、毎日書き込むことで自信を高める「日誌(ジヤーナル)」、成功習慣を身につける「ルーティンチェック表」など具体的に書き込めるツールを提供していることにあります。思想や哲学だけでは伝えるのは難しい。哲学と方法論がセットになったことで、広く受け入れられているのだと思います。

20年の学校教育の現場で培った指導方針が軸となり開発された「原田メソッド」。メンタルトレーニングの概念、自立型セルフマネジメントツールをセットに、アスリートや多くの企業にて採用されている。

成功するアスリートが重要視しているのはメンタルなんです。イチローも大谷翔平もそうです。一番はメンタル。2番目が生活、3番目が技術・体力となる。しかし多くの選手は一番に技術、体力を重視し、メンタル・生活を軽視しているのです。

これはではいけないと思った私は、中学生にメンタルトレーニングを取り入れたことで3か月で結果が出たのです。しかし、ビジネスの世界もスポーツの世界も、いまだメンタルを軽視しているのが現状です。心にアプローチしなくては結果は出ないということを知っていいただきたいですね。

 

日本の教育現場において
スポ―ツは危機的状況にある

原田メソッドの認定パートナー養成塾は今が26期目になるのですが、22期までは対面でやっていました。コロナ禍となった23期を経て、今では完全にリモートでの指導になりました。コロナ禍にも関わらず26期は160人まで増え、ニューヨークや中国などからも参加され、海外にも広げることができるようになったんです。今までよりも、より効率的に広く展開されるようになりました。

会社の屋台骨になるような人材として、30歳後半から40歳くらいまで年代が鬼のように働きますよね。そうするとワークライフバランスも崩れて、家庭でもうまくいかなくなるんです。そこで原田メソッドを使って指導をすることで、その人だけでなく家庭もうまくいった、という例がたくさんあります。企業で学んだメソッドを活用して、自分だけでなく自分の子どもや子どもが所属しているグループにも影響する……そういう連鎖が今後も広がることを願っています。

最後にスポーツの教育的な価値についてお話させていただきます。良いスポーツ教育を受けた人材は企業から引っ張りだこになる事実はあるわけですが、その教育が果たしてどう企業に良い成果をもたらすのか、ということが明確にならっていると説得力がありますね。根性があったり、という抽象的なことだけではダメなんです。社会の流れは急ですから、その明確なエビデンスを証明できなければ、日本の教育現場において、「スポーツは危機的状況にある」とさえ思っています。そのことをより多くの方に認識していただきたいです。全国のスポーツ指導者、そしてスポーツ教育にかかわるすべての方にとって、ここ数年が正念場になってくると思っています。この状況を変えるべく、私どもも職務を果たしていきたいと思っています。

 

 

 

PROFILE

原田隆史(はらだ たかし) | 株式会社原田教育研究所 代表取締役社長
大阪市生まれ。奈良教育大学卒業後、大阪市内の公立中学校に20年間勤務。保健体育指導、生活指導に注力。問題を抱える教育現場を次々と立て直し、「生活指導の神様」と呼ばれる。独自の育成手法「原田メソッド」により、勤務3校目の陸上競技部を7年間で13回の日本一に導く。大阪市教職員退職後、大学講師を経て、起業。「原田メソッド」に多くの企業経営者が注目し、野村證券、キリンビール、三菱UFJ信託銀行、神戸マツダ、住友生命保険、ユニクロ、アステラス製薬、カネボウ化粧品、武田薬品工業などの企業研修・人材育成を歴任。これまでに約350社、7万人のビジネスパーソンを指導した実績を持つ。Jリーグの浦和レッズのメンタル研修などスポーツチームの指導でも引き続き活躍する。著書は『カリスマ体育教師の常勝教育』『大人が変わる生活指導』(以上、日経BP社)、『目標達成ノート』(ディスカバー・トゥエンティワン)など多数。

2021/04/16(fri)~04/18(sun)
「SPODUCATION biz Festa」を開催!

4月16日(金)~18日(日)の3日間、ビジネスパーソンに向けたオンラインイベント「biz Festa」を開催。スポーツで培われたノウハウが、ビジネスでも応用できることを紐解くべく、「ビジネス」と「スポーツ」のスペシャリストが集結します。ビジネスに役立つテーマごとに、多数のスペシャルトークセッションでお届けする大型オンラインイベントの続報にご期待ください!

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