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【4/16~18 biz Festa Preview#08】「スポーツ」と「カルチャー」と組織づくりの最適解とは?/唐澤俊輔

「SPODUCATION」では 4月16日(金)~18日(日)の3日間、ビジネスパーソンに向けたオンラインイベント「biz Festa」を開催する。スポーツで培われたノウハウが、ビジネスでも応用できることを紐解くべく、ビジネス書のベストセラーを生み出す有名著陣とアスリートが激論を交わす。数多の企業のビジネスパーソンを指導してきたスペシャリストたちと、トップアスリートの邂逅は、どのような“解”を生み出すのか。現状打破に日々を捧げる現代ビジネスマンに向けた大型オンラインイベントを前に、“ビジネスサイド”のゲストのインタビューを紹介していく。

『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』ディスカヴァー・トゥエンティワン/388ページ/1980円(税込)

スポーツにもビジネスにも組織があり、それぞれの「カルチャー=文化」が存在する。しかし「文化」の解釈は人それぞれ。ふわふわとした空気のようなイメージが一人歩きしかねない。そこに実践的な経験をもとに、“カルチャー”を真正面から言語化し、組織づくりの体系化=「カルチャーモデル」の設計方法を紐解いたのが『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』著者の唐澤俊輔氏だ。マクドナルドやメルカリ、SHOWROOMで組織づくりを主導してきた唐澤氏が考える、スポーツとビジネス、そしてチームづくりのカルチャー論とは?

 

部活動のチームづくりから、企業の組織づくりへ

ーー唐澤さんのスポーツに対する関心は? スポーツでは比較的「カルチャー」という言葉がよく使われます。

「スポーツは好きですよ。自分の会社では今、人事系のITシステムを開発しています。人やチームの情報をもっと可視化したり、情報の連携を自動化したりしながら、組織づくりを支援するようなツールです。企業の組織づくりに関しては沢山考えてきたのですが、スポーツ界にもチーム力を高めるためのアイデアがあると思います。それらを掛け合わせると、いい気づきが生まれるのではないでしょうか」

 

ーー唐澤さんは小学校で野球、中学校でバレーボール、高校でバスケットボール、大学でテニス、社会人としてバスケットボール、ゴルフをされていたそうですね。さまざまな年代でこれだけ色んなスポーツに関わることも珍しいと思います。

「『色々やろう』というポリシーを特に持っていたわけではなく、その時々で、自分がやりたいことをやっていた感じです。僕なりにやりきった感覚もあれば、違う世界で新しいことにトライしたい思いもありました。ただ一貫していたのは球技、チームスポーツが好きでしたね。皆でワイワイやりながら、連携プレーするチームスポーツの方が自分に合っているな、とは当時から思っていました。バスケでも自分だけでスリーポイント決めまくるよりは、みんなでパスつないでポイント取る方が好きですね。特段、運動神経が良いわけではなかったので、練習しがいがあるスポーツを中心にやってきたと思います」

 

ーーチームスポーツが好きというのは、ビジネスでの組織づくりとリンクしますね。スポーツでも、「組織を変えていく」という気持ちがあったのでしょうか?

「チームづくりを意識し出したの、少年野球や中学のバレーボールの時からだったと思います。少年野球ではBチームですがキャプテンを務め、『ピッチャーがストライクが決まらなくなったら集まろう』など声を掛け合ってプレーするようになりました。中学のバレーボール部でもキャプテンを担いました。ただ、当時は『スラムダンク』の影響でバスケットボールの人気がすごく高い中で、どうやって新入生をバレーボール部へ勧誘するかのミッションがまずありました。いわゆる“採用”を当時からやっていたわけです。入部した新1年生を育成して、やる気を出させて、ということを今思えばやっていましたね。いわゆる会社組織と同じようなことを最初に経験したのが、部活動だったのかもしれません」

 

ーー唐澤さんはマクドナルド、メルカリ、SHOWROOMにて、採用・育成・制度設計・労務といった人事全般から組織の成長を担って来られたと思いますが、風土の異なる企業、組織で成果を上げていく中で、どのようなミッションを掲げきたのでしょうか?

「『やりきって次に行こう』という気持ちが常にありました。その都度僕が果たすべきミッションを成し遂げています。たとえばマクドナルドからメルカリに移った時は、外食産業からITへと真逆の世界に飛び込む感覚でした。マクドナルドではマーケティングの仕事をずっとしていましたが、メルカリでは社長室で入社した後、人事全般の責任者を任されました。マクドナルドでは『どの店舗でも同じ味、同じサービス』という画一的なオペレーションが求められますが、メルカリでは、IT企業としてクリエイティブ、イノベーティブであることを重視しており、マニュアルもルールもあまりなくて自由度が高いのです。中央集権型vs分散型、という感じで組織カルチャーが異なります。そういった違う環境に身を置くことで新しいことを学べたと思います。SHOWROOMではCOOという立場上、事業や組織全般に責任がありました。仲間たちと理想の組織を追求して動き、社長の前田(裕二)さんと議論を交わす中で、僕にとっての理想の組織像が明確になってたんです。そして『自分自身の手で、最高の組織、チームを作ってみたい』という思いが生まれてきたのです」

 

ーー昨年Almoha LLCを起業されましたが、それが背景にあったと?

「そうですね。『最高』の定義は人それぞれですが、自分の理想とする組織をゼロから作ることで、理想を実現できるか検証したいと考えました。提供するサービスも、組織づくりをサポートするITツールやコンサルティングが主になります。当然、自分の会社をいい組織にしたいという気持ちもありますし、ビジネスとしても『組織づくり』が好きなんだと自覚してやっています」

 

ーーツールというのは、カルチャーモデルを作るうえで必要な要素をデータ化するためのもの?

「組織内部の人に関するデータをそろえて、それらを基に人材や組織の開発を支援していけると考えています。そして、リモートワークなどオンライン化によって組織づくりの難易度が上がって今ますので、人同士がオンライン上でももっとコミュニケーションを取れてイノベーションを起こせるよう、支援していけたらと思っています」

 

 

多様性を活かせる組織づくりには、カルチャー設計が不可欠

ーー著書によると、マクドナルド時代から『いい会社にしたい』という思いがあったようですね。

「はい。マクドナルド入社時は赤字で苦しんでいる会社だという認識があって、それをより良くしたいという思いが生意気ながらありました。そのつもりでずっと仕事して、最終的にはV字回復まで経験させてもらいました。これをもっと多くの人に広げられる力を付けたい。もっと苦しんでいる会社を立て直すような貢献をしたい。そんな思いが続いて、次のキャリアへとチャレンジし続け、最後は自分で会社を作ってしまいました(笑)。それを目的にしてきたわけではなくて、やりたいことを追求し続けて今に至った、という感じですね」

 

ーー「カルチャーモデル」についてもお聞かせください。著書ではカルチャーの定義を『組織の価値観や行動規範』とされ、創業から受け継がれたものが自然とカルチャーになるパターンと、明確な意志や方向性を持って意図的に作り出すパターンがあると紹介されています。多くの方が前者をイメージしていると思いますが、会社のカルチャーを「意図的に作り出す」というのは斬新でした。

「メルカリでは創業時から『バリュー』を掲げ、すべてをバリューという価値基準、行動基準に照らし合わせて社員とコミュニケーションを取っています。それを徹底しているので、皆の意識や方向性がそろいやすくいちいち前提の議論しないんですよ。『うちはGo Bold(大胆にやろう)。だからこっち』『そうだね』という具合に進むので、議論も実行もとにかく早い。組織力としてめちゃめちゃ強いなと感じました。たまたま会社の文化が醸成されたわけではなく、意識的に作られたカルチャーなんです」

 

ーーメルカリには多様な人種の方がいるそうですね。その中でカルチャーを共有するのは難しいように感じますが?

「僕のいた当時でも40カ国ほどの方が一緒に働いていました。しかし、結果論ではなくて、意図的にカルチャーを作っているので、新しい人材にどんどん理念が受け継がれ、伝わっていくのです。後から急にカルチャーを作るのは大変ですが、最初から設計してしっかり積み上げていけば、それほど難しいことではありません。近年、ダイバーシティ(多様性)が大事だとよく言われますが、多様な人材を集めると、皆背景が違うので、各々が好き勝手な方向に走り出してしまう。これが結構危険で、『じゃあそれで』と言って進めたら全然違った、ということも起こり得るわけです。そうならないように経営理念として、ミッションやビジョン、パーパスといったゴールをしっかり設定することが大事です。それから、バリューやウェイ、クレドといった価値観や行動指針をしっかり作ることで、社員一人ひとりの判断軸はそろえる必要があります。そのうえで、多様性を活かせるように整理するのです」

 

ーーGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)もカルチャーモデルを採用していると、著書の中でありました。一方で日本だと、メルカリのようなスタートアップの意欲的な企業を除いて採用している企業は少ないのでしょうか?

「多くの伝統的な日本企業では、多様な人材が揃うことを前提としていません。どちらかと言えば似たようなタイプの人材を揃え、日々上司の背中を見せながら組織カルチャーを浸透させています。同質な人材が集まっているケースが多いので、バリューとかわざわざ言わなくても、『阿吽の呼吸』や空気感ですり合うのです。この凝集性が日本企業の強みでもあって、色んな部署を経験しながら色んな仲間がいて、その会社らしさを極めていく。特定の職種のプロというよりは、その会社のプロ。それが、組織のカルチャーをある意味で作っています。カルチャーには2種類あるという話でしたが、前者(創業から自然と受け継がれ作られるパターン)で作ってきたのが日本企業。それはそれで強みでしたが、多様性を取り入れようとした時に、阿吽の呼吸が足かせになってしまうでしょう。多様性も阿吽の呼吸も活かせるような組織づくりが、日本企業のこれからの課題になってくると思います」

 

ーーなるほど。前者の自然発生的なカルチャーモデルのリスクは、具体的にどのような所にあるのでしょうか?

「意図的にカルチャーを作り上げない場合、想定しない組織カルチャーが作り上げられてしまう恐れがあります。たとえば日本の大企業で近年に不正会計問題がありましたが、社長は『不正会計しろ』という指示はしていないはずです。けれども、『悪い数字を上層部に報告すると責められる』『怒られたくない』『目標を下回ることは避けなければ』という力学が働いたのでしょう。つまり、上司に物が言いにくいカルチャーがいつの間にか出来ていたのだと思います。それが最終的に数字の改ざんに至ったのだと、第三者委員会の報告書にも書かれています。やはり『こういう組織です』と明確にしないと、経営陣の知らないところでそういう組織ができてしまうリスクがありますね」

 

ーー明文化せず暗黙の了解で動いているからこそ、忖度をしてしまうと?

「そうですね。当然『改ざんしろ』とは明文化しないものの、どこかで『良い数字であって欲しい』という期待を上層部はしています。その期待感が空気として伝わって、忖度が始まってしまう。それは暗黙の了解とも言えますが、組織としてはリスクです。ガバナンス、コンプライアンスという観点では、そういったプレッシャーが生まれないようにしなければなりません」

 

 

マクドナルド、メルカリ、SHOWROOMの要職を歴任し、昨年にAlmoha LLCを共同創業した唐澤氏。自分にとって「最高」の組織文化づくりを目指しつつ、人・組織を支援するサービス・ツールの開発や、組織開発のコンサルティングに取り組んでいる。

 

カルチャーづくりには、思考プロセスの共有が大事

ーーバリューを策定することで社員が自ら考えて行動できるの組織を育てられることがメリットだと。マクドナルド時代は全社員参加型のワークショップを展開して社内のコミュニケーション・対話を深めていったそうですね。

「そうですね。『ルールの通りにやってください』だと、自分で判断することがなくなってしまいます。それでは対話も生まれませんし、考えない組織となってしまうのです。バリューというのはルールではなく『お客様第一主義』のような、曖昧さのある概念です。たとえば、会社が大赤字になってまでお客様第一なのかと言えば、それは違いますよね。それなら、『すべての商品を無料で配ればいいじゃないか』という話になってしまいます。このようにバリューとは、ルールとして明確化されておらず解釈の仕方に幅があるので、議論が欠かせません。『お客様第一ってなんだろう』みたいな議論を通して、皆で理解を深めていく。組織カルチャーを作っていく時には、皆で同じ思考プロセスをたどることがすごく大事です。経営陣が10時間考えて『お客様第一主義にします』とひと言だけ伝えても、その裏側や目的、中身は伝わりません。だからメンバーも同じように10時間悩むプロセスを通ることで、その意味合いが腹落ちするし、皆で共有化できます。そうしないと同じ言葉を掲げていても、目指す状態のイメージが違ってきてしまう。そうならないようにワークショップという対話の場を作って、皆で同じ思考プロセスをたどって同じ結論にたどり着くようにしたのです」

 

ーーそれは、唐澤さんご自身が提案されたのでしょうか?

「僕の入社当時の社長は原田泳幸さんでしたが、『バリュー(行動指針)』を作るときは次のサラ・カサノバさんに変わっていました。どちらがいい、悪いではなく、原田さんの時はまさにトップダウン的な組織で、社員も自分達で考えて提案するよりは、決定されたことを確実に実行するという実行力の強い組織でした。一方のサラさんは、皆がどうしたいか聞くんですよ。でも皆は聞かれることに慣れていないので、『いや社長、早く決めてくださいよ』という感じで上手く動けていませんでした。それをきっかけにして、ボトムアップ(現場主導)でものごとを勧める成功体験を得るために、本社スタッフ全員で行動指針を作ることにしたのです。そこで作った4つの行動指針のうち、1個目が『Be Customer』、お客様の立場になって考えよう。2個目は『Go Gemba』、まずは現場に行こう。そんなに難しいことでも、イノベーティブなことでもありません。当時は、『皆で一枚岩になる』ということにフォーカスしていました。そのために、1番コアになる価値観、行動指針をそろえることに専念したのです。どういう組織にしたいかという話は社長や人事ともしていて、お客様第一を体現するために、バリューとして『Be Customer』と掲げました。それを実行するため、本社よりも現場で意思決定した方がお客様に応えられるという判断で、地域別に組織を分けました。西日本は西日本の責任者が、地域で意思決定する。こういう事も、作りたいポリシーと連動させて変えていきましたね。全員で同じ思考プロセスを辿った上で、人・組織にまつわる施策を連動させていくことが重要なのです。仮にサラさんがトップダウンで行動指針を決めたとしても、『カスタマーファースト』など同じものが出ていたと思います。でも社長が一人で言っていても、皆の行動は変わりません。何故それが大事なのかを皆で考えて、『やっぱり大事だよね』と思える議論のプロセスを経る必要があります」

 

 

ーー「答えを出さないで一緒に考えさせる」というコーチング的なアプローチということでしょうか。

「サラさんはまさにそうですね。必ず『なぜ?』と聞いて考えさせて、答えを持っていても言いません。『コーチングスタイルの上司だな』と僕も思って仕事していました。ただ、僕の本でも書きましたが、必ずしもそれが正しいというわけではありません。トップダウンで短期的に強くするのも、一つのやり方。コーチングというスタイルも、一つのやり方。どういう組織を作りたいかによりますね」

 

 

ーーバリューとは別に「ミッション」という言葉も使われていますが、意味合いの違いについてお聞かせください。よく聞く「目標」という言葉も、すごく似ていますよね。

「ミッションとバリューは少し性質が違います。ミッションは『自分たちが社会に何を成すか』という存在意義、使命。僕達がわざわざ会社という箱に集まって、何を世の中に価値提供するかという存在意義自体を、全員ですり合わせることです。そうすることで、個々の施策に関する議論はあっても行きたい方向は一緒なので、全体の方向感を見失うことはありません。目標という言葉もミッションに近いのですが、もう少し前段階の話で使われることが多いですね。ミッションは、『世界平和』みたいな大きいことを掲げるわけです。そのために、『今年はまず、こことここの戦争をなくそう』みたいなものが目標。目標をクリアしていき、最終的に世界平和というミッションを達成するのです。一方のバリューは主語が『会社』『社会』ではなく、『社員』の1人ひとりです。チームに所属している1人ひとりがどういう価値観、判断で行動するか。組織の根底となる価値観なので、ピラミッド図で表すと一番下の土台になります。目標やミッションが、その上にある感じですね」

 

 

スポーツでもカルチャーは「良し悪し」ではなく「好き嫌い」

ーー『自分たちが社会に何を成すか』という意味合いでは、Jリーグ王者の川崎フロンターレは、中々チーム文化が根付かない川崎で、「地域密着」を掲げて愚直に施策を続けたそうです。地域社会のためという大きなミッションが、短期的な結果に満足せず、現在のような成長のつながったのではないかと。

「近いですね。『優勝』と掲げると、優勝を1回した時に『じゃあ次どうしよう』みたいになってしまう。『ステークホルダーマネジメント』と言いますが、目的を地域への貢献、活性化という所に置くことで、関係者を巻き込む力がめちゃめちゃ強くなるんです。やっぱりサポーターとしても、ただ優勝だけを目指す戦闘集団よりも、地域で一緒に頑張ろうとしているチームを応援したくなりますよね。それで地元の企業も応援してくれたり、スポンサーがついたりといいサイクルに入るのでしょう。そのためにはミッション、ビジョン、バリューが色んな人から共感される会社、チームらしいものであることが大事かなと思います」

 

ーーサッカーのスペイン1部リーグの「アスレティック・ビルバオ」はバスク出身選手の純血主義を貫き、結果として1部から降格していません。帰属意識が強いがために育成組織もしっかり出来上がっています。スポーツでもカルチャーが明確にあるチームだと、皆がそれにしたがって最良の方法で強くなる。唐澤さんのお話に近い気がしました。

「ビジネスと近いですね。人材獲得からチーム作りまで、『地元密着』というカルチャーを一貫している。逆に『銀河系集団をそろえる』というポリシーのチームであれば、勝つことが一義的に大事で、勝つためにはなんでもする。それはそれで、1つのチームのあり方としてはアリだと思います。応援する側は好きなチームを選択すればいい話なので、ビジネスと同じですよね。カルチャーは良し悪しではなく、好き嫌いだと思うのです。不正とかはNGですが、そうでなければ別にトップダウンが悪いとも思いませんし、それに共感する人が集まればいいのかなと。個人のパーソナリティも同じで、外向的な人も内向的な人もいていいのです。組織やチームにもそれぞれ色があって、らしさがあって、自分達が好きな形をとればいいんじゃないかなと思います」

 

ーー著書の中では、カルチャー設計を5つのプロセスで紹介していますよね。(1)現状のカルチャーを棚卸する、(2)ビジョン・ミッションを設定する、(3)カルチャーの方向性を決める、(4)カルチャーを言語化する、(5)カルチャーを浸透させる。これは、スポーツチームにも置き換えられるのでしょうか?

「置き換えられるんじゃないでしょうか。僕がスポーツしていたのは主に学生の時なので、あまりピッタリなお答えになるか分かりませんが。行き先としてのミッション、ゴールを定めて、そこに向かって何を大事にするのか。そこのバリューというコアを定めていくのが言語化で重要なことです。どんな選手を集めるか、どういう育成手法を取るか……など1つひとつ、組織の作り方と同じことをスポーツチームでもやるのが良いでしょう。それをすべて可視化して整理して浸透させていくと、チームのカルチャーが定着してくる。『川崎フロンターレって、地元に愛されたチームだよね』と認識されると、そういうチームだから入りたいと思う選手も出てくると思います。逆に、『そんなに川崎に根付けと言われたら辛い』という人は、入らないでしょう。でも、その人はどんなに上手くても入らなくて良いのです。それは会社も同じことで、めちゃめちゃ天才でも考え方がそろっていないと、意見が合わずに空中分解してしまうので」

 

ーー最後になりますが、スポーツでの経験をビジネスで活かせるとしたら、どんなことでしょうか?

「個人競技の場合は、努力して達成するまでやり切る力がビジネスにも効いてくると思います。チームスポーツの場合は、自分一人では優勝できなくて、仲間との連携も高めないといけません。やり方を反対されることもあるでしょう。その中でのチーム作りを通して、自分とは違う考えや能力を持っている人の存在に気づけます。『あの人は足が速いから、こういう役割をやってもらおう』みたいな適材適所の考え方は、企業でも同じです。そういう人達といかに一緒に同じゴールを目指して走っていくかという経験は、ビジネスで人間関係を構築して成果を出していくことにつながります。だから、僕は今になってチームスポーツやっていて良かったと思うし、親に感謝しなきゃなと思っています」

 

 

 

PROFILE

唐澤俊輔(からさわ しゅんすけ) |  Almoha LLC Co-Founder COO
慶応義塾大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者) 2020年より、Almoha LLCを共同創業。グロービス経営大学院 客員准教授。自身の経験をもとに「組織カルチャー」の可視化、言語化という難題に挑み、組織・経営課題の解決策を提示した『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓。

2021/04/16(fri)~04/18(sun)
「SPODUCATION biz Festa」を開催!

4月16日(金)~18日(日)の3日間、ビジネスパーソンに向けたオンラインイベント「biz Festa」を開催。スポーツで培われたノウハウが、ビジネスでも応用できることを紐解くべく、「ビジネス」と「スポーツ」のスペシャリストが集結します。ビジネスに役立つテーマごとに、多数のスペシャルトークセッションでお届けする大型オンラインイベントの続報にご期待ください!

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