COLUMN

【♯02】唐澤俊輔│ビジネス×スポーツに見る「カルチャーモデルの4類型」<前編>

マクドナルドやメルカリ、SHOWROOMで組織づくりを主導し、組織開発の体系化=「カルチャーモデル」の設計方法を紐解いた『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』を上梓した唐澤俊輔氏。事業と組織を急成長させてきたスペシャリストが、スポーツチーム運営の示唆を受け、ビジネスにおける組織文化の作り方について連載で論じていく。

 

組織の方向性を決める4つの経営スタンス

 SPODUCATION主催イベント「bizFesta」での名波浩さんとの対談をもとに、スポーツからの学びをビジネスでの組織運営にどう活かすのかについてご紹介する本コラム。第2弾の今回は、拙著『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』で扱っている「カルチャーモデルの4類型」を起点に、ビジネス組織におけるカルチャーとスポーツチームのカルチャーとを照らし合わせることで、スポーツからの示唆を得てゆきたいと思います。

 まずは、前提として「カルチャーモデルの4類型」についてご紹介します。これは、私自身の複数の企業での実務経験や企業研究を通じ、以下の4象限で整理をしたものです。

 

 

 縦軸に、中央集権型の組織か、分散型の組織かどうか。つまり、トップに権限や意思決定が集中しトップダウンで運営する組織か、権限委譲しながら自律分散的に組織運営するか、という違いです。

 横軸には、変化志向か、安定思考か。これは、事業や組織を成長させていく中で、日々変化を起こしながら非連続な成長を求めるか、毎年積み上げながら安定的な成長を求めるか、という対立軸です。

 

<中央集権×変化志向> カリスマ経営者が大胆にスピーディーにけん引

 では、一つずつご紹介してゆきましょう。 まず、左上は「カリスマリーダー経営」です。創業者が経営するベンチャー企業に多いスタイルで、経営者自身がそのカリスマ性をもって、トップダウンで意思決定しながら事業を成長させてゆきます。スピーディーに変化しながら組織運営をするため、朝令暮改はある種当たり前。経営者主導のイノベーションによる、非連続な成長を志向します。

 

<中央集権×安定志向> 組織全体で擦り合わせながら着実に前進

 次は、右上の「チームリーダー経営」。中央集権的にトップダウンで進める点はカリスマリーダー経営と同じですが、経営者個人ではなく経営陣として、チームで摺り合わせながら意思決定をしてゆくのが特徴です。摺り合わせによりリスクを潰し、安定的に成長してゆくことができます。日本の大企業に多いスタイルで、金融やインフラなどリスクを避ける必要のある業界には特に多い傾向にあります。新卒で採用した人材をいろんな部門にローテーションさせながら、職種のプロよりも、その会社のプロを育てながら摺り合わせ力を強化してゆく、いわゆるメンバーシップ型の雇用と相性がよいですね。

 

<分散型×安定志向> 権限譲渡委譲とスキル重視のジョブ型雇用で結果を出す

 3つ目は、「複数リーダー経営」で、図の右下に当たります。安定成長を志向する点でチームリーダー経営と通ずるのですが、チームでの摺り合わせよりも、部門のリーダーに権限委譲を積極的に行う点が異なります。外資系のグローバル企業に多いのですが、地域別や事業部別に権限委譲を行い、各部門の責任者が売上・利益の目標を確実に達成することで、全体としては安定的に成長してゆきます。責任者は短期的に掲げた目標達成へのプレッシャーが強くかかることもあり、長期の人材育成よりもプロフェッショナル人材を中途採用して組織強化することが多く、いわゆるジョブ型の雇用形態とセットで組織運営することで機能するタイプです。

 

<分散型×変化志向> 個の多様性を最大化し非連続な成長に期待

 最後は、左下の「全員リーダー経営」です。社員一人ひとりに自由度を与えて大胆に任せることで、社員からのクリエイティブなアイデアや、多様な社員同士の化学反応によるイノベーションを期待します。そうすることで、経営者に依存せずに組織として非連続な成長を起こし続けることを狙っています。昨今、ホラクラシー型やティール組織といった言葉で、自律分散型の組織が注目されていますが、そうした組織運営に近いタイプです。シリコンバレーのIT企業に多く、日本でもスタートアップ中心に取り入れる企業が増えてきています。

 

組織カルチャーは「好き嫌い」であり正解はない

 この4象限では縦横2つの軸に対立する概念を置いているので、複数を同時に選択することはなく、度合いの差はあれど、4つのいずれか一つに該当することになります。皆さんの所属する組織も、傾向としてどれが近いというのがあるのではないでしょうか?

 組織カルチャーには正解がないため、「良し悪し」ではなくて、「好き嫌い」だと言えます。つまり、これら4タイプは、どれが良いか悪いかということはなく、事業モデルや目指す組織像によって、自社にとっての勝ち筋となるタイプを選択すれば良いのです。

 大事なことは、どれかのタイプを選んだら、組織づくりや人事にまつわる施策に一貫性を持たせることで、一つ一つ積み上げながら組織カルチャーを構築してゆくことです。(詳細は、『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』を是非ご一読ください)

 

「カルチャーモデルの4類型」をスポーツチームに当てはめると?

―#02後編に続く―

 

PROFILE

唐澤俊輔(からさわ しゅんすけ) |  Almoha LLC Co-Founder COO
慶応義塾大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者) 2020年より、Almoha LLCを共同創業。グロービス経営大学院 客員准教授。自身の経験をもとに「組織カルチャー」の可視化、言語化という難題に挑み、組織・経営課題の解決策を提示した『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓。

 

【スポーツ運営に学ぶ カルチャーモデルと組織づくり/唐澤俊輔~back number~】

【#01】唐澤俊輔│スポーツチーム運営に共通するビジネスの経営戦略<前編>

【#02】唐澤俊輔│ビジネス×スポーツに見る「カルチャーモデルの4類型」<前編>

【#03】唐澤俊輔│プロチーム監督に倣う「組織を一枚岩にする」方法論<後編>

【#04】 唐澤俊輔│「異物の採用」がもたらす組織の成長と進化 <前編>

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