COLUMN

プロサッカープレーヤー
香川真司が考えるスポーツのチカラ

今年1月より主戦場をギリシャに移しPAOKテッサロニキ所属選手として新たな挑戦を続ける香川真司選手。昨年は全国に数多くの生徒を抱える「花まる学習会」の代表・高濱正伸氏と手を取り合い、スポーツ教育プログラム「Hanaspo」サッカー教室を立ち上げた。未来を担う子どもたちのために、伝えたいことは何なのか? 長く日本代表の10番として世界と戦ってきた香川選手が、“スポーツが育むチカラ”について語った。

写真提供/Hanaspo

 

サッカーに触れながら、サッカー以外の可能性を広げる

――スポーツ教育プログラム「Hanaspo」サッカー教室の活動に香川選手が関わられている理由からまずはお聞かせください。

「もともと子どもが好きだったというのがありますが、サッカーを通じて得てきた経験を、次世代を担う子ども達に還元したいと思っていました。自分自身の能力に対して諦めるのではなく挑戦し続けてほしい。そういうことを考えているときに教育者の高濱(正伸)先生と出会い、花まる学習会の理念である『メシが食える大人』という言葉がとても響きました。僕は運良くサッカーでメシが食えていますが、逆の可能性もあったかもしれません。サッカーに触れながら、サッカー以外の可能性も広がる、そんな学びのある場所を作ろうと思ったのが理由ですね」

 

――サッカーを通じてきた経験を次世代に還元する、ということですが、香川選手がスポーツで得られたチカラは何だと思いますか?

「僕自身、判断力が養われたのではないかと思います。小さいころから野球やバスケットボールなど、サッカー以外のスポーツをしていたことで、様々なシチュエーションで判断が求められていました。だからそういったスポーツでの経験でとっさの判断力は磨かれたのではないかと思います」

 

――スポーツ経験を活かして社会に適応するチカラを身に着けるために、社会におけるスポーツの存在はどうあるべきと考えますか?

「人間力を育むことができる場所として、もっと身近な存在になればと思います。日々の生活の中でスポーツが身近であれば、スポーツに接する機会も増えるわけです。そうするとスポーツを観戦する、プレイするといった経験が増えてスポーツから学んだことが社会で活きていくと思います」

 

 

結果ではなく、それを求める過程が人を大きく成長させる

――スポーツは必ず“勝ち”と“負け”に分かれます。この点についてどうお考えですか?

「結果としての勝ち負けはありますが、そこに至るまでの努力だったり、考え方が大切なのではないでしょうか。もっとうまくなるために、もっと強くなるためにどうするのか試行錯誤し、その過程で色々な工夫や創造力を働かせると思いますが、その行動が人を大きく成長させる大切なことだと思います」

 

――その過程の中に、多くの成功と苦しみがあったかと想像できますが、香川選手が今日までサッカーを続けて来られた理由は何だと思いますか?

「サッカーが何よりも好きで、多くの人に支えられていることがサッカーを続けていられる原動力です。サッカーは本当に何よりも好きですが、今までキャリアを歩む中でいくつもの壁がありました。でもどんな時でも応援してくれるサポーターの皆さんや周りで支えてくれる人たちがいて乗り越えることができましたし、その人たちのおかげで続けてこられたんだと思います」

 

――今年からギリシャで挑戦を続けていらっしゃいますが、海外で活躍し続けられる選手に共通することは何だと思いますか?

「環境適応力が高いことだと思います。海外でプレーするときには、環境が良いクラブもあればそうでないクラブもあります。サッカー以外にも、住環境や食事、言語、コミュニケーションなどピッチ外での適応力が求められてきます。そこでいかに順応し、その環境に身を置いた中でサッカーに集中できるか。そこが海外でプレーし続けられる選手に共通していることだと思います」

 

 

まだまだ満足していない。多くのことをピッチで表現したい

――サッカーは、個人と組織の両方の価値(存在)が重要なスポーツだと思います。香川選手が考える個と組織のバランスとは?

「サッカーはチームでの戦いであると同時に、個人としての戦いもあります。自分自身でやりたいこととチームとしてやるべきことのバランスが大切です。自分の結果だけを求めるのであれば、パスなんて出さずに、とにかく自分だけシュートを打てばいい。でも、それではチームは勝てない。チームの勝利と、僕個人の戦い、それをどうバランスよく表現していくのかというのは大切なことだと思います」

 

――人生とサッカー、それぞれに目標と目的はありますか?

「できるところまでサッカーを続けていきたいですね。やっぱりサッカーは好きですし、できるだけ長くプレーしていきたい気持ちが強くあります。まだまだ自分自身に満足はしていないですし、今後プレーしていく中で、多くのことをピッチ上で表現していきたいと思っています」

 

べースとなる知識と創造力のバランスが社会で求められる

――選手生活を通して、スポーツから学べる事、育まれることは何だと思いますか?

「自分の可能性を広げて行けることじゃないかなと思います。スポーツをプレーしていくことで、様々な可能性を閉ざさず、今の環境や今の能力から『僕はこのくらいでいい』って決めつけるんじゃなくて、どんどん挑戦して自分自身の可能性を広げていくことが大切だと思います」

 

――現在も続く「詰め込み」とも表される認知的な教育により、子どもたちが社会で生き抜くチカラは失われていくように感じています。そこを克服していくチカラは、スポーツでこそ養われると考えておりますが、香川選手はどのようにお考えですか?

「詰め込むバランスが大切なんじゃないでしょうか。詰め込み過ぎると創造力が欠如する可能性もありますが、一定のベースとなる知識がないと、そもそも創造する時の材料がなくなると思います。だからこそ、一定の詰め込みがある中で、バランスを持って自分なりに創造力を働かせてスポーツをすることだったり、社会で生きていくことが大切だと思います」

 

PROFILE

香川真司(かがわ しんじ) |  PAOKテッサロニキ所属
1989年3月17日生まれ、兵庫県出身。高校卒業前にセレッソ大阪に加入し、2009年J2得点王を獲得。ドイツの名門ドルトムントへ移籍し、獅子奮迅の活躍でブンデスリーガ連覇に貢献。その後、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドでリーグ優勝を経験した後にドルトムントへ復帰。トルコ、スペインを経て、今年1月からギリシャのPAOKテッサロニキ所属。日本代表としてW杯に2大会(2014年、2018年)連続で出場。
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