自身の引きこもり経験克服を機に独自のコーチングメソッドを開発し、多数の企業経営者、アスリートなどのカウンセリングを務める中島輝氏。ベストセラー『自己肯定感の教科書』の著者であり、“自己肯定感の第一人者”として注目を集める人気カウンセラーが、社会で生き抜くために必要な実践的な技術を連載形式でお届けする。
写真/川しまゆうこ
心理カウンセラーの中島輝です。
今回、とり上げるテーマは「スポーツが育んでくれるマインド」についてです。部活動など、子どもたちが行うスポーツの狙いとして「健全な心身を育む」ということがよくいわれます。身体を使って行うスポーツが健全な身体を育むことは、誰もが容易にイメージできることでしょう。
一方、心のほうはどうでしょうか? スポーツをするということが心にどんな好影響を与え、どんなマインドを育ててくれるのでしょうか。
目次
スポーツが高めてくれる、自己肯定感を構成する「6つの感」
スポーツが心に与える好影響として、第一に「自己肯定感を高めてくれる」ことがあるとわたしは考えます。
認知度が高まっていますからいまさら説明の必要はないかもしれませんが、自己肯定感とは「ありのままの自分を肯定し、認めることができる感覚」のこと。自己肯定感が低く「自分は駄目な人間だ……」と思っているより、自己肯定感が高く「自分は自分のままでいいんだ!」「自分にはできる!」と思っているほうが、どんな場面でなにをするにも、よりよい方向へと自分を導いてくれます。
では、なぜスポーツで自己肯定感が育まれるのでしょうか? それは、自己肯定感を構成する要素を満遍なく育んでくれるものがスポーツだからです。わたしは、自己肯定感は以下の「6つの感」で構成されると考えています。
やるべきことが明白だからこそ、自己肯定感が高まりやすい
スポーツをすると、「もっとうまくなりたい!」「今度の試合には絶対勝つ!」といった気持ちを抱き、自然と目標を掲げます。その目標達成のためにどんな練習をするべきかと考えることは「自分で決定する」ことですから、❺の「自己決定感」が高まります。そして、目標達成に向かう挑戦心に伴う「自分にはできるんだ!」という気持ちが、❸の「自己効力感」を高めてくれるでしょう。
また、目標達成のための課題に臨むには、それを受け入れる適応力が求められます。そのため、❷の「自己受容感」も高まります。そして、努力の結果、目標を達成できれば自分の価値を感じたり自信を持てたりしますから、❶の「自尊感情」や❹の「自己信頼感」も育まれるでしょう。さらに、同じスポーツを志す仲間やコーチらと過ごし、それぞれが役割を果たすなかで、❻の「自己有用感」も高まっていきます。
たとえ失敗しても、自分の意志で立ち上がれるのがスポーツの特性
もちろん、いつもいつもスムーズに目標を達成できるとは限りません。失敗して自信を失い、自己嫌悪感を抱いたり自己否定してしまったりすることもあるでしょう。でも、そういうときにも、目標達成に向かって、つまり自己肯定感向上に向かって再び立ち上がりやすいというのもスポーツが持つ特徴です。
このことは、他のことではなかなか難しいと思います。
たとえば、人間関係をこじらせてなんらかの失敗をしてしまったとします。どんなにその関係を修復したいと思っても、自分の意志だけでは相手は変えられません。ふられた恋人に復縁を願ったとしても、そうできるとは限りませんよね。
一方、スポーツはちがいます。サッカーをしていてどうしてもシュートがうまくいかないといった場合も、いいコーチがそばにいてくれたなら、「こういう悪い癖があるよ」「取り組むべき課題はこれだ」というふうに、やるべきことが具体的で明確になりやすいのです。だからこそ目標達成に向かって再び立ち上がることができます。スポーツが持つその特性も、自己肯定感を高めてくれることの一因でしょう。
スポーツがビジネスパーソンにもたらす科学的なメリットとは?
PROFILE
- 中島輝(なかしま てる) | 「トリエ」代表 /「肯定心理学協会」代表
- 心理学、脳科学、NLPなどの手法を用い、独自のコーチングメソッドを開発。Jリーガー、上場企業の経営者など1万5000名以上のメンターを務める。現在は「自己肯定感の重要性をすべての人に伝え、自立した生き方を推奨する」ことを掲げ、「肯定心理学協会」や 新しい生き方を探求する「輝塾」の運営のほか、広く中島流メンタル・メソッドを知ってもらうための「自己肯定感カウンセラー講座」「自己肯定感ノート講座」「自己肯定感コーチング講座」などを主催。著書に『自己肯定感の教科書』『自己肯定感ノート』(SBクリエイティブ)など多数。7月8日に新刊『習慣化は自己肯定感が10割』(学研プラス)が発売。
【第一人者が解き明かす“自己肯定感”のビジネス学/中島輝~back number~】
【♯01】<前編> 自己肯定感から見る組織論「自己肯定感」は「心理的安全性」から生まれる
【♯02】<前編>やるべきは、自分自身の怒りのコントロール。チーム・組織における「怒りのトリセツ」
【♯03】<前編>スポーツが育んでくれる、ビジネスシーンで役立ついくつものマインド
【♯04】<前編>失敗を成功へと導く。リーダーに必要な「声かけ」のポイント
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