COLUMN

【♯04】古野俊幸│ビジネスにおける
「攻めと守り」の捉え方 <前編>

個々の性格診断から人間関係を科学的に分析し、最適な組織編成・開発に応用する『FFS理論』にて、数多の組織・人材の活性化を支援してきた古野俊幸氏。この理論をもとに人気漫画の登場人物を題材に解説した『ドラゴン桜とFFS理論が教えてくれる あなたが伸びる学び型』を上梓し、注目を集めている。企業だけでなくプロ、大学スポーツの組織編成も支援してきたエキスパートが、FFS理論をベースにスポーツから日常に応用できる自己分析、チーム編成の考え方を連載形式でお届けする。

思考の特性は「凝縮性」「受容性」「弁別性」「拡散性」「保全性」の5因子に分類される

FFS理論の概要はこちらの記事をチェック!

 

スポーツにより異なる「攻め」の役割

 スポーツでポジションを聞かれて「私はフォワードです」と言うと、皆さんは『攻め』をイメージするでしょう。また、アメフトでは「オフェンス」「ディフェンス」と分かれていて、「オフェンス」も同様に「攻め」のイメージです。

 もちろん、サッカーのフォワードは「点取り屋」ということで、攻めの存在であることは、その通りです。しかし、ラグビーはどうでしょうか? ラグビーのフォワードは、最前線でスクラムを押し合う「重戦車」に当たるため、「攻め」ではあるものの、攻撃的に走り回っているイメージはありません。それはバックスの役目になります。

 また、ハンドボールやグランドホッケーなどの競技はどうでしょうか?

 実は、ハンドボールやホッケーは、点を取るための戦術は「遅攻」やセットプレーがメインとなります。そのために相手を崩すプレイ、例えば3対3から3対2へ、2対2から2対1へと、一人を自由にさせる駆け引きです。それは、繰り返しボールを回し、選手はポジションを変えつつ、相手の陣形を崩すのです。いくつかのパターンを繰り返しつつ、スピードにも変化をつけていく感じです。FFS理論で言えば、ある程度の枠組みの中で工夫改善していくことを得意とする「保全性が持つ強み」を活かしているのです。

 そしてタイミングを計って、中盤やバックスの選手が意外性を持って駆け上がり、隙に作るのです。そう、どちらかと言えば、中盤やバックスの選手の方が〝攻め的〟要素を持つ、FFS理論では、「拡散性が持つ強み」が発揮されるのです。

接戦となった東京オリンピック女子ハンドボール決勝のフランスvsROC。ハンドボールでのオフェンスはいくつかの「型」を変えつつ、相手の陣形を崩していく特性がある/Getty Images

競技特性が選手の起用法に影響する

 T大学のアメフト部は、大学に入って初めてアメフトを始める選手が多いため、「経験者」や「拡散性因子が高い選手」を「ディフェンス」に揃えていきました。その理由を監督に聞くと「オフェンスが選択できるプレイは限られているし、こちらが主導できるので、経験値が少なくても、型を作ればある程度動けます。しかし、ディフェンスは相手次第なので、プレイ毎にアジャストする知識や能力、センスが必要なんです。だから、経験者を並べる。次に想定外に強い選手を。FFSでは拡散性ですね」と答えてくれました。

 実際に社会人の日本のトップクラスの「ハンドボールチーム」、「グランドホッケーチーム」の分析をしましたが、フォワード側に保全性、中盤からバックス側に拡散性の出現率が高かったのです。選手や監督は、専門的に分析に取り組んでわけではなく、競技を始めた頃から、そのポジションを体験したであろうことを考えると、競技が持つ特性が、結果的に選手のポジションや起用法に影響を及ぼしたのでしょう。

 

ビジネスにおける「オフェンスとディフェンス」とは?

 さて、ビジネスの世界で、この「フォワード」や「オフェンス/ディフェンス」を考えてみましょう。

 まず今、多くの企業が求めている「オフェンス」は『新規事業開発』でしょう。まさに「攻めたい」し「点を取って欲しい」と切実に思っているのです。

 そこで、新規事業を担える人材として各部門から『エース級』が集められます。これまで実績を出してきた「デキる奴」たちです。しかし、結果としては、ほとんどが失敗しているのです。

 それはなぜでしょうか?

 つまり、先ほど、スポーツの事例で紹介したハンドボール的「フォワード」だったからです。

 大手企業は、既にビジネスモデルも商品もサービスも完成されていて、お客様が持つブランド価値も高いのです。その中で主力ビジネスを担っているとすれば、決められた枠組みの中で、セットプレーで得点しているようなモノです。場合によると、最後にちょっと足を出して押し込むだけ。まさに“ごっちゃんゴール”ですが、得点ランキングではトップを走っているのです。

 

“お膳立てされたエース”の正体

 一度「エース」という称号を貰うと、周囲がエースとして扱いますから、当然良いボールが回ってきます。決めやすいので決まるのです。ますますエースは「エース」として君臨していくのです。スポーツのように“本当の実力の世界ではない”ので、君臨しやすいのです。

 しかし、お膳立てされて得点していた人材が従来の商品やサービスではない“新規事業”を担当するのです。まず既存の枠組みをベースにして発想しようとしますので、壁にぶち当たります。次に、上層部に「何を求めているか」と言質を取りながら落しどころを見つけようとします。つまり、誰かに「正解を出してほしい」ということなのです。そんなこんなで、結果的にはお茶を濁す程度のモノしか提案してきません。自らが『どうしてもやらせてほしい』企画を本気で提言するわけではないからです。

 

新規事業で能力を発揮できる因子タイプとは?

―#04後編に続く―

 

PROFILE

古野 俊幸(ふるの としゆき) | 株式会社ヒューマンロジック研究所代表取締役
新聞社、フリージャーナリスト、出版社を経て、1994年にFFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のための会社を設立して、現在に至る。現在まで約800社以上の組織・人材の活性化支援。チームの分析と編成に携わった実績は60万人、約6万チームを数える。チームビルディング、チーム編成の第一人者。昨年、大人気漫画を題材にFFS理論を説いた『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる   あなたの知らないあなたの強み』(日経BP)が10万部越えの大ヒットとなり、今年4月には『ドラゴン桜とFFS理論が教えてくれる あなたが伸びる学び型』(日経BP)を上梓した。

 

【スポーツと自己分析が教えてくれる「あなたをアップデートする方法」/古野俊幸~back number~】

【♯01】<前編>バドミントン元日本代表 潮田玲子さんが教えてくれた「弱みを受け入れる」ということ

【♯02】<前編>サッカーも営業も「自分の持ち味」を知っている人は成功する

【♯03】<前編>バスケに見るチームの関係性とデータ活用

【♯04】<前編>失敗を成功へと導く。リーダーに必要な「声かけ」のポイント

【♯05】<前編>シナジー(相乗効果)を生み出す関係性とは?

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