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ダビド・ビジャ│「ボールを蹴った瞬間から学びは始まっている」~世界的ストライカーが重要視する幼少期の育み~

スペイン代表歴代最多得点の記録を持ち、日本のヴィッセル神戸でもプレーしたダビド・ビジャ。引退後は世界で展開されているサッカーアカデミー「DV7」を主宰している。世界の最前線で戦ってきた稀代のストライカーは、なぜ育成に心血を注いでいるのか? ビジャが考える「スポーツが育むチカラ」とは?(※2020年10月に収録)

逆境は必ず訪れるものであり、乗り越えなければならないこと

──スポーツが育む人間性の成長についての考えを聞かせていただきたいと思います。

「クラブのアカデミーに所属するほとんどの選手はプロになれません。プロになれるのはほんの一握り。とても厳しい現実があります。だからこそ、アカデミーのプロセスのなかある教えがとても大切なのです。サッカーを教えるということ以上に、サッカーを通じての教育や、人生の学び方、仲間意識、競争を教えることがとても大切なのだと思っています。なぜなら、繰り返しになりますが、全員がプロになれるわけではないからです。私が『DV7 SOCCER ACADEMY』で子ども達に期待していることは、プロになってほしいということ以上に、このアカデミーでスポーツを通じ様々なことを経験し学んでほしいということなんです」

──ビジャさんは4歳の時に大怪我をし、その後、2部リーグでプロとしてのキャリアをスタートされました。逆境に立ち向かう精神はいかに育まれたのでしょうか?

「サッカー選手は、人生の中でさまざまな障害にぶつかります。私もサッカーをしていく上で、とても難しい時期がありました。おっしゃる通り、4歳の時に大腿骨を骨折し、それはプロサッカー選手になるという夢を叶える過程で最初の試練でした。このときは両親や家族の支えにより、また、プロサッカー選手になるという夢を叶えたいという気持を強く持つことで、乗り越えることができたと思っています。私にとって初めての困難でしたが、その後も沢山の困難に直面し、それを乗り越えることで多くのことを学びました。それは、プロになってからも同じです。人生で大切なことは、逆境を乗り越えるために常にベストを尽くし、持っている力を最大限発揮しようと努力することです。夢を叶えようとする過程で、逆境は必ず訪れるものであり、日々乗り越えなければならないことなのです」

 

──ビジャさんはスペイン代表史上最高得点者でもあります。プレッシャーとの向き合い方、精神力、メンタルの成長プロセスを教えてください。

「このスポーツをしていると本当にたくさんのプレッシャーがあります。特に、世界レベルでの戦い、W杯で自国のユニフォームを着ているときには大きなプレッシャーがありました。でも、私はピッチ内外で、一人のサッカー選手、また一人の人間として常に同じように振る舞うように心掛けていました。私の子どもの頃は両親や兄弟、子どもが生まれてからは妻、そして助言をしてくれる昔からの友人たちが私の支えとなりました。私がプロのサッカー選手として世界で沢山の人と知り合いになり、ここまで歩んでくることができたのは、彼らの教えがあったからに他なりません。彼らのおかげで『ダビド・ビジャ』のキャリアは支えられてきたのです」

 

──ストライカーとしての順応力についてお聞かせください。さまざまなチームで結果を出すには、周囲との連携は不可欠です。新しいチームに移籍したときはどのように適応していったのでしょうか?

「私は国内外を含め沢山の移籍を経験しましたが、加入初日からチームに馴染むよう心掛けていました。新しいチームやリーグに移籍するとき、チームメイトやクラブ全員が自分に合わせることは不可能です。全てが今までとは違う状況になりますので、相手ではなく自分から協調する姿勢が大切です。だから最初の一週間はいつも、チームがどういうサッカーをするのか、どういうクラブなのか、チームメイトがどんなプレーをするのか等を観察していました。自分から生活に馴染み、自分のプレーをチームに適応させることで、チームの一員となれるよう心掛けていました」

 

スペインでは幼少期から育成に力を入れている

──スペインにはサッカー選手としてだけでなく人間力にも優れた偉大な選手がいますが、そういった選手が育つ理由は何でしょうか?

「他の多くの国よりも、スペインではずっと前から幼少期の育成を重要視してきました。17歳、18歳になってから学び始めるのでは遅いと考えています。ですから、スペインのアカデミーでは5歳、6歳の頃からの教育にとても力を入れています。これまでも、これからもスペインでは良い選手が出てくるでしょう。プロになるのは17歳、18歳ですが、そのときのためにも、幼い頃から学び始めなければならないのです。世界的なスペインサッカーの成功はその成果の表れなのだと思います」

 

──スペイン代表として、EUROとW杯をともに制したシャビやイニエスタからはどのようなことを学びましたか?

「スペインには素晴らしい選手が沢山いますが、彼らもその選手たちの一人です。常にうまくなりたいという気持ちを持っていました。彼らは素晴らしい技術を持っていましたが、練習でも常に『うまくなりたい」『勝ちたい』という野心を持って取り組んでいたと思います。そんな彼等の側で学ぶということは、私のキャリアにおいてとても重要なことでした。なぜなら、サッカー選手は向上していくために良いコンディションを保たなければなりませんが、本当に大切なことは、毎日一生懸命努力することであり、そういう気持ちを持ち続けることだからです。彼等はキャリアを通じてそれを証明してくれました」

 

──ビジャさんは育成に定評のあるスポルティング・ヒホンの下部組織出身です。スペインの育成についてお聞かせください。

「プロでやっていくための心構えやフィジカルを養うためにも、幼少期・少年期の指導は大切です。育成で成功を収めているスポルティング・ヒホンは、バルセロナやレアル・マドリーのように選手獲得に多くの移籍金を払えるクラブではないからこそで、育成を土台とし、良い選手を育てることに力を注いでいます。そして長きに渡り、優秀な選手が輩出するという結果を出してきました。スポルティング・ヒホンから18歳でトップチームで活躍する選手が多く育っているのは、育成年代に注力している結果なのです」

 

全てはサッカーを始めたときから始まっている

──幼少期の育成方法で重視されているポイントはどんなことでしょうか?

「最初のステップ、つまり子ども達がサッカーを始めた時期というのはとても重要です。自信を持ってボールを扱うこと、どのような状況で自分たちでボールをコントロールするのかを学び、友情、仲間意識、チームメイトと団結することをサッカーを通じて学ぶことが重要です。つまり、全ての学びはサッカーを始めた瞬間から始まっているのです。子ども達は質の高い技術を身に付けますし、フィールドでのポジショニング、個人プレーだけでなく、ボールがあるときやないときの動き、近くに味方がいるかいないか、といった戦術的なことも学んでいきます。こういうことは、育成期間に少しずつ時間を掛けて教えていきます。これらは1年や2年で教えるというのではなく、10年以上掛けて育成していくことなのです。育成年代に、このケースではどうプレーするのか、そしてプレーだけでなく精神的な部分でもコーチの話に耳を傾け学ぶこと、日々精進していくことの大切さを学ばせてあげることが重要なのです。こういったことができれば、18歳になったときにプロで通用する選手ができ上がるのです」

 

──ビジャさん自身が成長していく上で、思い出に残っているエピソードはありますか?

「もちろん仲間のことや思い出深い楽しいエピソードは沢山あります。逆に5歳〜7歳くらいのときから仲間たちとサッカーをやっているので、辛かった思い出も沢山あります。コーチに試合に出させてもらえなかったり、試合に負けたり、疲れていて練習に行くのも嫌になったこともありました。ですが最終的には、プロになっていく過程でそれらは全て良い経験として私の中に生きています」

 

──久保建英選手は幼少期からスペインでプレーしていましたが、日本でも久保選手のような選手を育てる上で重要なことは何でしょうか?

「たしかにタケは、10歳から世界有数のバルセロナのカンテラでプレーしていました。私はタケのサッカー選手としての才能以上に、スペインに順応できたことが成功の要因だと思います。18歳になってプロとしてスペインに戻ってきた時、既にスペインサッカーのことも分かっていましたし、スペイン語も話せましたし、スペイン人との接し方も心得ていました。それはタケにとってはとても大きな要因だったと思います。ですが、たとえそれまでのキャリアをずっと日本で過ごしていたとしても、タケは今と同じように成長し成功していたと思います。実際、タケは幼少期にバルセロナでプレーしましたが、プロとして日本のJリーグでFC東京、横浜F・マリノスで成長しました。決してスペインだけで成長した選手ではないのです。唯一無二の才能を持った特別な選手だと思いますし、これから世界で成功していくと思います。ご質問に対してですが、日本国内でだけプレーしていても、久保選手と同じように成長することは可能だと思います。私たち(DV7)は日本でそれを実現しようと試みています。スペインで成功するために、幼少期からスペインでプレーする必要はありません。日本でも可能ですし、いつかスペインの高いレベルでプレーできる選手を育てるべく取り組んでいます」

 

──日々練習に頑張っている日本のサッカージュニアからの質問が届いています。まずは11歳の女の子からの質問です。子どもの頃、サッカーと同じように勉強もしっかりされましたか?

「もちろんです。子どもの頃は学びの期間でもありました。皆さんはプロサッカー選手としての私のことをよくご存知だと思います。でも、サッカー選手になりたい人は7歳からサッカーを始めるのと同じく、サッカーのためにあらゆる勉強をします。それはプロになる17歳まで続けました。この期間というのは、私にとって重要な期間であり、プロになった後も役に立っています。勉強をしたおかげで満足のいくキャリアを送ることができました」

 

──続いて、8歳の男の子からの質問です。サッカーで出会い、今でも関係が続いている選手はいますか?

「はい。私の親友はみんなサッカー選手です。DV7のプロジェクトで一緒に仕事をしている、アンドレスはそうですね。彼とは11歳の時に一緒にプレーしはじめました。私は17歳でプロになりましたが、彼はプロにはなれず別の仕事に就きましが、彼との友情は今も続いています。育成期間に知り合った友人も沢山いますし、プロになって所属した各チームでできた友人も沢山います。たとえ離れているとしても、今は電話やインターネットで簡単に話もできますし、連絡を取り続けることができますから」

 

──では最後に、スポーツをしている子ども達にメッセージをお願いします。

「情熱を持ってスポーツをしている、そしてサッカーをしている皆さんにアドバイスしたいことがあります。子どもの頃にスポーツやサッカーをするということは、本当に素晴らしいことです。毎日上手くなるために全力で練習してください。そして、みなさんの夢が叶うことを願っています。心から応援しています。全力で頑張ってください」

 

 

PROFILE

David VILLA Sánchez
1981年12月3日生まれ、スペイン北部アストゥリアス州ラングレオ出身。地元スポルティング・ヒホンのBチーム(3部リーグ)でプロデビュー。10季連続で2桁得点の安定した活躍で、2010年にバルセロナへと加入し、数々のタイトル獲得に貢献。8タイトルを掲げた。スペイン代表として通算98試合59ゴールの数字を残し、EURO2008と2010年W杯南アフリカ大会で優勝。キャリア後半はオーストラリア、ニューヨークなど海外に活躍の場を移し、2019年にヴィッセル神戸で現役を引退。サッカースクール『DV7 SOCCER ACADEMY』を母国スペインやアメリカなどで展開。日本でも東京、千葉、神奈川で3校のスクールを開校している。

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