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丸山和大│目標達成のために必要なチカラ

新宿を拠点にJリーグ加盟を目指すクリアソン新宿(Criacao Shinjuku)の代表であり、株式会社Criacaoの代表取締役社長CEOでもある丸山和大氏。「スポーツの価値を通じて、真の豊かさを創造し続ける存在でありたい」をミッションに掲げ、多方面で活躍する丸山氏が成し遂げてきた背景にある目標達成に必要なチカラとは?

大きなことも、折れない気持ちで言い続けてきた

──JFL第24節のクリアソン新宿VS鈴鹿ポイントゲッターズ戦(2022.10.9)では、JFL歴代最多入場者数を更新されましたね。

 

「東京都サッカー協会さんをはじめ色んな所にご協力いただき、この記録につながったのだと思います。もちろん、鈴鹿さんやカズさん(三浦知良)の存在も大きかったですね。ただ、まだクリアソン新宿がJFL(Jリーグと地域リーグの中間カテゴリ)のタイミングで、この記録は想定外でした」

 

 

──このタイミングで、この記録が生まれた要因についてお聞かせください。

 

「『新宿で見ていただきたい』という思いを胸に、地域の方々に向けて色々なことを言い続けてきたのが大きかったと思います。新宿の名前を冠したクラブなので、新宿という地域に根差した活動をしてきました。サッカーを通じて人々と感情を共有し、価値を届けていく。その甲斐もあってか、地域にも徐々に協力してくれる方が増えてきました。色んな方の力が集まってこの試合ができたのは、すごく意義がありましたね」

 

 

──折れない気持ちで、言い続けてきたことが大きかったのですね。

 

「大きなことを言い続けていく中で、『面白いね』『そこまで目指すなら応援しよう』という方も増えてきました。もちろん言うだけではなく、そこに近づくためにアプローチして、一つひとつ壁を乗り越えていくことも大事です。それが信頼につながり、その積み重ねで色んなものが動いていくと考えています。東京都リーグ4部の時から『世界一』とか言っていましたが、誰も本気にしていなかったでしょうね。でも関東リーグ1部、JFLとステップアップする中で、周りからは『こいつら本気でやるんじゃないか』という雰囲気も少しずつ出てきました」

 

 

──スポーツの練習を通して、監督や仲間から信頼を得ていくのと似ていますね。そのように周りを巻き込んでいく経験は、今のビジネスにも活きていますか?

 

「そういう経験があるからこそ、今も信じてやり続けられているのだと思います。ビジネスにも、『やればできるでしょ』という気持ちを持って前向きに取り組めていますね。小さい頃に親や先生、色んな方から教わったことも大きいと感じています」

 

成功体験を積み重ねて、習慣化していく

 

──目標設定を習慣化するために必要なことは?

 

「習慣は、因数分解すると『インパクト×反復回数』だという話があります。つまり、インパクトを反復することで、習慣化されていく。かつて僕が通った桐蔭学園高校サッカー部は、自分の想定よりも2、3段ハイレベルな環境でした。差分が大きかった分、それを埋められた時のインパクトも大きかったと感じています。想定と現実の差分を見つめて、一つひとつ目標設定しながら乗り越え、インパクトを反復する。僕の場合はその成功体験が積み重なって、目標設定の習慣化につながったのだと思います」

 

 

──差分を埋めるためには、自分の現在地を把握することも必要不可欠ですよね。

 

「そうですね。目標に向かう前に、自分の現在地や状況を知らなければなりません。1キロ離れているのか100キロ離れているのか、目標に向かうための手段もバスや飛行機など様々です。あるいは飛行機の予約が一杯で、自分は使えないかもしれません。多くの要素をとらえた上で、自分に最適な目標設定と進み方を選んでいく必要があります。いわば『健全な自己認知』ですね。トップ選手がセカンドキャリアに進んだ時に、上手く目標設定できないことは往々にしてあります。ただ、届かない目標設定をして、自分が迷子になる『挫折経験』も以降の人生には役に立つでしょう。絶えず考え続けてやっていくことが大事ですね」

 

 

──クリアソン新宿を作ろうと思ったきっかけは?

 

「桐蔭高校は神奈川トップクラスの強豪校で、力がないと自分のポジションをつかめない環境でした。一方で大学時代のサッカーサークルでは、サッカーの上手さだけでなく色々な価値観が認められる環境でした。両方から学んだことを上手く掛け合わせて、『もっとサッカーの可能性を広げたい』と思ったのがきっかけです。原体験になっているサッカーを軸にして、『世界一のサッカークラブにする』と夢をふくらませ、大学4年の時にサークルのメンバーと作りました」

 

 

──大学での出会いが、ビジネスにもつながっているのですね。

 

「あと、クリアソンの共同創業者であり、クリアソン新宿の現役選手でもある剣持は、高校サッカーの同級生です。彼は、高校卒業時にプロからオファーがあったのに断りました。数年でクビになり、厳しい生活をしている先輩を見ていたこともあり、現実的に難しいと判断したそうです。皆が目指したい世界のはずなのに、人生のマイナスと捉えられてしまうことがある。その状況を変えるためには、サッカー以外のことにも目を向ける必要があると感じています。前職の商社では、色んな世界の経営者とふれあう機会がありました。サッカー界も同じように、サッカー界以外の人にも関わりを広げて、価値を認めてもらう。サッカー界には魅力があれば課題もあり、解決策を考えて取り組んでいくべきだと思っています」

 

 

「目的」が不明確だと、「目標」も定まりづらい

 

──「目標」と混同されがちな「目的」は、どのように扱うべきでしょうか?

 

「『目的』と『目標』はセットにすべきです。目的は、目標を達成した先にある『何のために』という部分ですね。短期的な目標だけでとらえると、目標への向かい方が定まりづらくなります。そこにたどり着く手段を考える時に、関係者が増えて議論が複雑になるためです。反対に、目的をしっかり議論して明確にすれば、目標に対しての戦略も見えやすくなります」

 

 

──指導者と子どもで目標達成に向けて取り組む経験は、社会に羽ばたくベースになると思います。

 

「そうですよね。ただ勝つだけで良ければ、強い選手を外から呼べばいい話です。でも指導者は、子どもが人生の中で目標達成に向けて取り組み続けられるように、指導しなければなりません。強豪クラブにはそういう考え方があるから、成果が出るのだなと感じます。ビジネスでも、結果が出ている所には理由がありますよね」

 

 

──個人スポーツとチームスポーツでは、目標設定の方法は変わるのでしょうか?

 

「誰にも迷惑がかからないなら、好き勝手に目標設定すればいいと思います。ただチームスポーツの場合は、目標設定は自分一人のものではありません。だから、誰のための目標設定かを一番に考えた上で、コミュニケーションしていくことが大事ですね。クリアソン新宿は周りから見ると、絵空事を言っているクラブです。目標設定とは裏腹に降格争いという状況で、『できてないじゃん』と自分達でも思っています。それでも、来年はJFLで優勝してJ3に昇格しようと取り組み続けています。『JFL残留を目標にしろ』と言われたら、『だったら他のクラブでいいですよね』というスタンスです。しっかりコミュニケーションを取ってそれを伝えていますし、信じてついてきてくれる方々を大切にしています。最終的にはリーダーが決めることにはなりますが、ちゃんと説明しないと誰もついて来なくなってしまいます」

 

目標達成のアプローチは選手それぞれ

 

──目標達成に向けてのアプローチは、個人単位で言えば様々なタイプがありますよね。

 

「以前オーストラリアで聞いた話ですが、人生の成し遂げ方には『エベレスト型』と『サハラ砂漠型』の二つがあるそうです。僕のようなエベレスト型の人は、目指す山を早く決めて、そこに対してどうしていくか考える。つまり目的、目標を明確にした上で、進みながら修正していくタイプです。一方のサハラ砂漠型は、はっきりと見えてはいないオアシスに向かって、コンパスの示す方角だけを頼りに進んでいく。左右に行ったり来たりしながらも進み続けて、気が付くとオアシスに到達している、というタイプです。統計的にはサハラ砂漠型のほうが多いですが、絶対的な優劣はありません。プロの選手にも様々なタイプがいますし、子ども達にも自分らしいスタイルを見つけて進んでほしいと思っています。指導者は、そのスタイルを見つけるための枠組みを整理してあげると、子どもに合わせて指導しやすくなるでしょう」

 

 

──スポーツでは様々なシチュエーションが発生しますが、ビジネスでも同じことが言えますよね。エグザンプル(前例)をたくさん持っておくことが、人生にとって有用だと思います。

 

「僕は『n=1理論』と呼んでいますが、サンプル数が一つしかない自分の成功体験を、全ての是だと思ってしまう人が多いのです。でも10個、100個とサンプルを増やして統計を取ったら、結果は大きく変わります。自分にとって最適なやり方が、別の人にとっても最適とは限りません。スポーツ界は非言語な要素が多い世界だから言語整理が遅れていて、n=1理論に陥っている人が圧倒的に多いですね。『これは自分にしか当てはまらないのでは』『他のアプローチ方法はないか』などと、別の角度から考えることも大事です。スポーツはもちろんビジネスでも、そういう人が色んな価値を生み出す一流の人になっていると感じます」

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