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INTERVIEW

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【高校サッカー指導者の心得】日比 威(帝京高校サッカー部監督)│時間の効率化が生む選手の自主性。

高校サッカー部の監督は、試合に勝つことはもちろん、生徒の人間的成長を担う立場にある。高校サッカー選手権等の華やかな舞台の裏には、そこに挑む指導者と生徒の数だけ汗と涙の物語が存在する。名将と呼ばれる指導者はいかにして、学生たちを成長させ、夢の舞台へと導き、社会に通じる人材を送り出してきただろうか? このコーナーでは高校サッカーの監督の指導方針、信条、指導者としてのサイドストーリーを紹介する。

 

脱・帝京スタイルが新しいチーム構築のカギ

──日比監督が帝京高校サッカー部で指導する上で大事にしていることは?

 

「僕が帝京高校でサッカーをしていた頃(1991年第70回全国高校サッカー選手権で優勝)は、スピードとパワーでバチバチにやって、ちょっとでも隙があればチャレンジする『縦に速いサッカー』を標榜していました。それは全員の身体能力が高くフィジカルが強くないと成立しないサッカーでしたが、2014年に僕がコーチとして母校に戻った頃にはすでにそういったタイプの選手はいませんでした。丁寧にボールを動かせる子は多かったですが、試合ではスピードとパワーのチームに勝てない、という状況です。そこで僕はテクニックとスピードの両方を目指すことにしました。ボールを細かくつなぎポゼッションサッカーをやりながら、いつでもワンタッチ、ツータッチで相手の背後を取り、差し込みながら崩していくスタイルです。そしてチャンスがあれば帝京らしい縦に速いサッカーも狙っていく。最初の3年間こそなかなか浸透しませんでしたが、我々のコンセプトをしっかり伝えた上で帝京に来てもらった選手が増えたことで、近年は奏功してきたという実感があります」

 

──昨年は高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ参入戦まで進み、インターハイ準優勝(2年連続出場)と躍進が続いています。今年は09年以来となる高校サッカー選手権の出場を心待ちにしているオールドファンも多いと思います。

 

「今と昔では帝京のサッカーも変わっています。丁寧にボールをつなぐ分、激しさもスピード感も物足りないのか「今の帝京のサッカーはつまらない」と言う年配の方もいらっしゃいます。でも自分が預かっている子たちは非常にテクニックに優れ、フィジカルに頼らない卓越した技術を持っているので、チームとしてそこのベースは崩さないようにしています。同じ目標を持ったスタッフたちと地道に積み上げてきた7年間が昨今の結果につながっているのだと思います」

 

──選手を選考する上で重要視していることは?

 

「スピードやパワーよりも『止める・蹴る』が正確にできる子を重要視しています。中学生で試合に出られなかった子でも、『帝京で預からせてもらう3年間で伸ばすことができる』という思いでやっています。筋トレやフィジカルトレーニングにおいては、帝京科学大学でフィジカル測定を行い、『筋トレよりもボールを使ってアジリティを高めていった方がステップワークも良くなる』など専門家による具体的なフィードバックをもらえるようになっています。高校生だけでなく帝京中学校の子も一緒で、データを蓄積してケガ予防も含めた対策を行えるので、そこは帝京グループならではの強みなのかと思います」

 

──帝京ネットワークの連携という部分で、今年から「社会で活躍する人間を育成する」一環として、日比監督をはじめ高校サッカー部のスタッフが、帝京中学サッカー部の指導に参加されるそうですね。

 

「4月1日から私を含め高校のスタッフが参加し、中学生も同じグラウンドで練習しています。受験をして中学に入ってきた子の中にはサッカー初心者も当然います。そんな彼らにサッカーを好きになってもらって、なおかつ帝京高校のサッカー部の選手といずれは一緒にプレーするイメージも持てる環境づくりができればと思っています。もともと板橋区はサッカーが盛んな地域なので、近隣の小学校から入部希望の子がいても限られたスペースでしか練習ができませんでした。今では高校と同じような環境でプレーできるので、多くの中学生にサッカーをプレーする喜びを体験してほしいと思います」

 

──練習頻度はどのようにされているでしょうか?

 

「世の中的にも働き方改革の取り組みが盛んになっている状況で、我々サッカー部も時間を有効に活用するよう心掛けています。朝の一時間だけを練習に当てる等、時間を上手く見つけながら週3回の平日の練習、土日1回の試合というサイクルで中学生はやっています。高校サッカー部も基本的にトレーニングは90分と決めています。学生の“仕事”である勉学の時間確保はもちろん、過度な練習はカラダの負担や疲労につながります。スタッフにも家庭がありますし、ライフワークバランスも考慮しながら、時間の有用性は常に大事にしています」

 

日比監督は上から押さえつけるのではなく、選手と同じ目線で語りかけることが大事だと言う。

 

 

時間に余裕があることで生まれる創造力と自主性

 

──日比監督が帝京高校サッカー部だった頃はトレーニング時間が90分ということはなかったと思いますが、いつ頃から時間を凝縮するようになったのでしょうか?

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