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【♯02】唐澤俊輔│ビジネス×スポーツに見る「カルチャーモデルの4類型」<後編>

マクドナルドやメルカリ、SHOWROOMで組織づくりを主導し、組織開発の体系化=「カルチャーモデル」の設計方法を紐解いた『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』を上梓した唐澤俊輔氏。事業と組織を急成長させてきたスペシャリストが、スポーツチーム運営の示唆を受け、ビジネスにおける組織文化の作り方について連載で論じていく。

 

#02前編はコチラ>

 

早大ラグビー部に見る中央集権型から自律分散型への移行

 このカルチャーモデルの4類型について、スポーツチームのカルチャーにおいても、4つのどのパターンもあり得ると考えています。

 プロ野球を見ていても、同じオーダーをできるだけ維持して、安定的にチームを強化し勝ちにつなげようとする監督もいれば、日々打順や守備位置を入れ替え、変化を起こして刺激を与えながら勝利を目指していくスタイルの監督もいます。安定志向と変化志向、いずれのスタイルもスポーツチームにはあり得ることを証明していると言えるのではないでしょうか。

 また、早稲田大学ラグビー蹴球部で監督を務められた中竹竜二さんと対談した際に伺った話ですが、早稲田大学ラグビー蹴球部は、前任の清宮克幸監督はまさにカリスマリーダーで、トップダウンで指示をして強いチームを作り上げていたそうです。後任の監督となった中竹さんは、「自分は清宮さんとは違うタイプ」と認識されており、あえて自分で細かい指示は出さず「選手一人ひとりに任せて、何が最適か自ら考えてもらった」と言われていました。そして、異なるチーム運営のスタイルをとりながら、中竹さんも清宮さんに続いて全国大学選手権で優勝する強いチームを作られました。まさに、中央集権型のチームから、自律分散型のチームへと移行した好事例と言えます。

 

企業もスポーツも優秀な人材の獲得にはスピードが命

 名波さんとの対談の中で、この4類型について伺ったところ、「4つどのパターンでも当てはまる」と名波さんからも明確にお答えいただきました。

 その上で、名波さんご自身のチーム運営のスタイルは、安定よりも「変化志向」 だと明言されています。変化を好まれる理由は明確で、「サッカー界はスピードが要求されるから」だということ。驚くことに、サッカークラブでも、縦割りの強い組織もあるようで、ハンコを何人も通さないと物事を進められないケースもあるそうです。たとえば、監督がチーム強化のために選手を獲得したいと思ったら、強化部のOKを得た上で運営母体の社長の印鑑が必要で、さらに、スポンサー企業やサポーターにまでお伺いを立てるクラブもあるそうです。そんな時間をかけていたら、他のクラブに持ってかれてしまう。選手は獲得競争だから、スピードが重要だということなんですね。

 企業においても採用のスピードというのは極めて重要で、トップタレントであるほど取り合いになるため、スピーディーにオファー(内定)を提示することが欠かせません。安定志向の組織だったら、トップタレントで影響の大きい人材ほど、後で問題にならないよう多くの人の承認を得ながら摺り合わせて進めることでしょう。それが、変化志向であれば、影響が大きいからこそ、多少リスクがあっても早く採用して早く組織にインパクトを出してほしい、と考えるわけです。スポーツチームの運営と全く同じですね。

 

名波氏の「カルチャーモデルの4類型」はカリスマリーダー経営? 

 さらに名波さんは、変化志向の中でも、「恐らくカリスマリーダー経営だろう」とも言われていました。迅速な意思決定をした後、チームを同じ方向に向けないといけないため、分散型ではなくトップのカリスマ性をもって引っ張る方がサッカーのチーム運営には向いているという考えからです。

 「プロサッカーは週に2度試合があって、前節は3万人観客が入っても、次は8,000人だったりする。その時に、原因は対戦相手なのか、曜日なのか、外的要因なのか、瞬時に判断しないといけない。正しい答えはわからないけど、カリスマリーダーであれば決めたことに対して全員が同じ方向を向ける」このように言われます。さらに、「キャプテンマークを腕に巻く選手が毎年変わるクラブもあるが、僕は間違っていると思っている。キャプテンマークは、そのクラブを長年知っている選手であるべき」とも言われていました。

 

スポーツチーム⇔企業 組織カルチャー醸成のヒント

 これらの話から、監督やGMといった経営側としては、日々スピーディーに意思決定をして、組織を同じ方向に向けることの重要性を感じますよね。併せて、キャプテンという立場も、サッカーが上手ければいいわけではなくて、「長年チームを知っていて人望があり仲間がついてくる」という要素が欠かせないということです。つまり、カリスマ性をもち慕われるリーダーが、トップダウンで「こっちに行こう」と示すことで、組織をスピーディーに方向付けることが、サッカークラブの運営には欠かせないということですね。

 組織カルチャーには絶対的な正解はありません。これは企業もスポーツも同じなのですが、企業において展開する事業や経営者のスタイルによって選ぶべき組織カルチャーが異なるのと同様に、スポーツにおいてもスポーツの種類や監督・GMによってとるべきカルチャーは異なってくるということが分かりました。

 やはり、スポーツチームという組織を通して、企業が学ぶものは多いですし、スポーツの経験からビジネスに一人ひとりが活かせることも多いということを強く感じさせられますね。

 

―#03に続く―

 

PROFILE

唐澤俊輔(からさわ しゅんすけ) |  Almoha LLC Co-Founder COO
慶応義塾大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者) 2020年より、Almoha LLCを共同創業。グロービス経営大学院 客員准教授。自身の経験をもとに「組織カルチャー」の可視化、言語化という難題に挑み、組織・経営課題の解決策を提示した『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓。

 

【スポーツ運営に学ぶ カルチャーモデルと組織づくり/唐澤俊輔~back number~】

【#01】唐澤俊輔│スポーツチーム運営に共通するビジネスの経営戦略<前編>

【#02】唐澤俊輔│ビジネス×スポーツに見る「カルチャーモデルの4類型」<前編>

【#03】唐澤俊輔│プロチーム監督に倣う「組織を一枚岩にする」方法論<後編>

【#04】 唐澤俊輔│「異物の採用」がもたらす組織の成長と進化 <前編>

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