/column/35986/

COLUMN

COLUMN

【#04】辻秀一│スポーツにもビジネスにも必要な非認知能力 <後編>

ベストセラー『スラムダンク勝利学』の著者で、応用スポーツ心理学をベースに多数の企業やプロスポーツでの人材育成に貢献してきたスポーツドクター・辻秀一氏。スポーツからビジネスシーンにも応用できる「揺らがず、とらわれず」の心を自ら整えるためのライフスキルの磨き方を連載形式でお届けしていく。

 

#04 前編はコチラ >

 

不機嫌の理由思考とご機嫌の価値志向のせめぎ合い

 非認知スキルは認知脳のリスクをヘッジしながら、認知脳が暴走することなく、心を整えて、認知脳がよりシャープにするべきことを考え、それを実行するレベルアップをサポートしていくことになります。わたしはこう表現しています。

 ノンフローの海から脱出しフロー大地の足をしっかりつけて生きることができるためのスキルです。

 脱出の手がかりこそが先述してきた自分への気づきとなります。脱出の糸口は気づきですが、大地にしっかりと足を踏みしめて生きるにはさらに非認知的思考が必要になります。

 例えば、ご機嫌の価値を考えること。フロー大地に価値をしっかりと持てないと、不機嫌の理由を認知が強烈に作り出してノンフローの海に引きずり込んでいく中で、ご機嫌の価値を考えてフロー大地に自身を滞在させなければなりません。

 脳の中で認知による不機嫌の理由思考と非認知によるご機嫌の価値思考のせめぎ合いなのです。ご機嫌の価値思考を鍛えておかないといけません。ご機嫌に見えるビジネスマンもアスリートも嫌なことがないとか認知してないのではなく、それとは別に非認知スキルを持って気づきとご機嫌の価値思考を磨いて自分を守っているのです。

 

 

持ち歩き可能な、心を整えるための思考スキル

 フロー大地にいることができれば、アイディアが出る、健康を維持できる、決断が早くなる、余裕が生まれる、視野が広くなる、人にやさしくなる、コミュ力があがる、楽しめる、切り替えが早くなる、などの価値を心底わかっているのです。

 そして、フロー大地でパフォーマンスの質を高めてより良い結果を招来するための非認知的思考が「今ここ自分」です。

 自身で唱えるように意識することでフロー大地での滞在を可能に、滞在時間を長くしてくれるのです。非認知的スキルはサウナや坐禅やヨガをしなくてもいつでもどこでも自分の心を整えるために持ち歩ける思考のスキルになります。

 自分のヘッドオフィスである脳の中に認知的な思考しかなく、常にストレスを抱えて質を悪くしているのか、非認知的思考を自分の脳の中に有していて自分の機嫌を自分で取りながら認知的にするべきことをしていくのか、人生の質に大きな差があること間違いないのです。二つつの脳の使い方をできる状態をバイブレインと呼んでいます。

 

無理なポジティブシンカーより自然体なバイブレーナー

 スポーツもビジネスも人間の営みです。

 結果が要求される認知的な世の中で、自分の脳や心をどんな状態で生きていくのかが問われます。そこで非認知的能力を有してバイブレイナーとして生きていたいと思いませんか? わたしは間違いなくポジティブシンカーよりもバイブレイナーを選択します。どちらも簡単ではありませんが、バイブレイナーの方が間違いなく自然体です。

 今回の2020東京オリンピックでも7競技8人のアスリートたちのメンタルトレーニングをしていましたが、みなバイブレイナーを目指し活躍しています。ホワイト企業大賞の企画委員としてもビジネスマンを対象に活動していますが、非認知的思考を磨きご機嫌カンパニーを目指している会社もビジネスマンも少なくないなと近頃感じます。

 スポーツもビジネスも思考、行動、結果の連続です。そこに非認知思考が介在するかどうかが勝負の分かれ目と言っても過言ではないのです。

 

―#05に続く―

 

PROFILE

辻秀一(つじ しゅういち) | 株式会社エミネクロス代表
北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学で内科研修を積む。 人の病気を治すことよりも「本当に生きるとは」を考え、人が自分らしく心豊かに生きること、 すなわち“人生の質=クオリティーオブライフ(QOL)”のサポートを志す。 スポーツにそのヒントがあると考え、慶大スポーツ医学研究センターを経て、 人と社会のQOL向上を目指し株式会社エミネクロスを設立。 応用スポーツ心理学をベースに、個人や組織のパフォーマンスを最適・最大化する、 自然体な心の状態「Flow(フロー)」を生みだすための独自理論「辻メソッド」によるメンタルトレーニングを展開。 スポーツ・芸術・ビジネス・教育の分野で多方面から支持を得ている。 行政・大学・地域・企業・プロチームなどと連携し、日本をご機嫌な状態「Flow」にするためのプロジェクト「ジャパンご機嫌プロジェクト」と、スポーツを文化として普及するための活動「日本スポーツ文化プロジェクト」を軸にスポーツの文化的価値「元気・感動・仲間・成長」の創出を目指す。37万部突破の『スラムダンク勝利学(集英社インターナショナル)』をはじめ、『フロー・カンパニー(ビジネス社)』、『自分を「ごきげん」にする方法(サンマーク出版)』『禅脳思考(フォレスト出版)』、『Play Life, Play Sports~ スポーツが教えてくれる人生という試合の歩み方~(内外出版)』など著書多数。

 

【Dr.辻によるスポーツから学ぶ「凪」の技術/辻秀一~back number~】

【♯01】元体操のオリンピアン、田中理恵さんにみるビジネスに活かすライフスキル<前編>

【♯02】『スラムダンク』に観るエクセレントチームの考え方<前編>

【♯03】「自立に重要なパフォーマンスマネジメント」<前編>

【♯04】スポーツにもビジネスにも必要な非認知能力<前編>

【♯05】周りのパフォーマンスを引き出すリーダー(リーダーシップ)<前編>

【♯06】アスリートが伝えるご機嫌の価値<前編>

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。

RECOMMEND