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【♯05】中島輝│ やっぱりコミュニケーションがすべて。
心理学から見る最強のチームワーク-後編-

自身の引きこもり経験克服を機に独自のコーチングメソッドを開発し、多数の企業経営者、アスリートなどのカウンセリングを務める中島輝氏。ベストセラー『自己肯定感の教科書』の著者であり、“自己肯定感の第一人者”として注目を集める人気カウンセラーが、社会で生き抜くために必要な実践的な技術を連載形式でお届けする。

写真/川しまゆうこ 

 

#05前編はコチラ>

 

「多様な関係者」をチームに引き入れて改革を起こす

 過去、わたしが仕事を通じてかかわってきたチームのなかでは、あるサッカーチームはまさにチームワークがいいチームでした。そのチームは、Jリーグのトップリーグ入りを目指していたチームです。

 その特徴というと、ここまでに解説してきたことのすべてができていたということです。チームには「○年までにトップリーグ入りする」という明確な目標がありました。その目標に向かってメンバー同士が密なコミュニケーションのなかでそれぞれの力を理解し、互いの強みをより活かすために選手たち自身が主体的にどんどん練習法を提案し、取り組む。

 もちろん、密なコミュニケーションを通じて、選手たちには「自分はこのチームにいていいんだ!」「自分にはこのチームのためにやれることがある!」という心理的安全性も担保されていました。このチームとかかわったことで、わたしのなかでのチームワークに対する考え方が出来上がったといってもいいほどです。

 ここまで解説してきた「チームワークがいい状態」に導くための方法に加えて、「多様な関係者」をチームに引き入れるということも挙げておきます。

 たとえばスポーツチームにチームスタッフを引き入れるにも、和の精神を持ち人間関係を重んじるわたしたち日本人の場合、どうしても「○○さんの知り合いだから」「むかし世話になったから」といった過去のつながりから人選してしまいがちです。

 もちろん、チームである以上、メンバー同士だけでなくチームスタッフとの協調も重要ですが、それはチームに入ったあとで育くめばいいこと。ただの過去のつながりから人選してしまっては、どうしてもいわゆる「なあなあ」の関係におちいりがちです。そうすると、チームに属する人間の思考は偏ったかたちで固定され、ともすれば逆にチーム力を低下させてしまいます。

 そうではなく、人選の段階では純粋な能力、そして多様性にフォーカスをするのです。そうして、たとえば「スポーツの知見を持つ管理栄養士」だとか「生理学の博士号を持つフィジカルトレーナー」といった「多様な関係者」をチームに引き入れることができれば、メンバーの視点を大きく広げることもできますし、これまでになかった練習法やフィジカルケア法といったチーム改革を通じてチーム力を向上させられることにもなるでしょう。

アナリストや栄養士、トレーナーなど、選手だけでなくチームを形成するスタッフも含め、既存の関係にとらわれないことが大事。多様性を受け入れることがチームの改革、効率化へとつながっていく/ Getty Images

 

バイアスを外して傾聴する姿勢がコミュニケーションのキモ

 もちろん、ここまで解説してきたチームワークが重要であるのは、スポーツチームに限ったことではありません。とくにいまという時代を考えた場合、ビジネスにおいてもチームワークの重要性はさらに増していくでしょう。

 コロナ禍により、経済は大打撃を受けました。そんな未曾有の状況においてこれから経済を上向かせるためには、それぞれの強みを徹底的に活かし、逆に弱みをカバーしてチーム力の最大化を図ることが肝要でしょう。ひとりの人間ができることは限られているのですからね。

 ここまで、チームワークを向上させる方法を解説してきましたが、最重要のものとなるとやはりメンバー同士のコミュニケーションだとわたしは考えます。コロナ禍にあるいまはコミュニケーションが難しいときではありますが、だからこそきちんと顔を合わせて会えるときにはしっかりとコミュニケーションを取ってほしいと思います。そして、そのためには自分のなかのバイアスを外すことを考えましょう。

 複数の人間が集まるチームに属する人なら、嫌な上司や先輩など、チームのなかにひとりやふたりは苦手な人がいると思います。そうすると、「どうせこの人の意見なんて大したものじゃないし……」といったバイアスを持って話を聞き流すということもあります。それでは、チームワーク向上のためにもっとも重要なコミュニケーションをしっかりと取ることができません。

 ちょっと面倒かもしれませんが、誰とコミュニケーションを取るにも、その都度「相手を尊重しよう」「まず話をちゃんと聞こう」と自分にいい聞かせてほしいのです。そうすればきちんとコミュニケーションが取れるだけでなく、その傾聴の姿勢や思いが伝わることで嫌だと思っていた相手の振る舞いもいい方向に変わり、苦手意識もなくなるかもしれません。

コロナ禍によりコミュニケーションが変わりつつあるときだからこそ、先入観を排除し、複数の仲間が集まる限りある時間を有効に活用したい/ Getty Images

 

 

──♯06へ続く──

 

PROFILE

中島輝(なかしま てる) | 「トリエ」代表 /「肯定心理学協会」代表
心理学、脳科学、NLPなどの手法を用い、独自のコーチングメソッドを開発。Jリーガー、上場企業の経営者など1万5000名以上のメンターを務める。現在は「自己肯定感の重要性をすべての人に伝え、自立した生き方を推奨する」ことを掲げ、「肯定心理学協会」や 新しい生き方を探求する「輝塾」の運営のほか、広く中島流メンタル・メソッドを知ってもらうための「自己肯定感カウンセラー講座」「自己肯定感ノート講座」「自己肯定感コーチング講座」などを主催。著書に『自己肯定感の教科書』『自己肯定感ノート』(SBクリエイティブ)など多数。

 

【第一人者が解き明かす“自己肯定感”のビジネス学/中島輝~back number~】

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