個々の性格診断から人間関係を科学的に分析し、最適な組織編成・開発に応用する『FFS理論』にて、数多の組織・人材の活性化を支援してきた古野俊幸氏。この理論をもとに人気漫画の登場人物を題材に解説した『ドラゴン桜とFFS理論が教えてくれる あなたが伸びる学び型』を上梓し、注目を集めている。企業だけでなくプロ、大学スポーツの組織編成も支援してきたエキスパートが、FFS理論をベースにスポーツから日常に応用できる自己分析、チーム編成の考え方を連載形式でお届けする。
思考の特性は「凝縮性」「受容性」「弁別性」「拡散性」「保全性」の5因子に分類されるFFS理論の概要はこちらの記事をチェック!
「オンボーディング」の概念と最初の育成トレーナーの重要性
おそらく、「運用の公平性」に目が行き、制度全般を整えることを優先させているのではないかと思っています。もちろん公平性は大切ですが、〝人軸〟で考えると、個別性こそが大切なのです。
最近、「オンボーディング」(早期の戦力化)が注目を集めています。そのためには「誰が誰を教えるか」=つまり『相性』が大切です。
我々の知見によると、最初の育成トレーナーは「思考行動パターンとして似ている(同質)」が有効です。「コミュニケーションがしやすく、トレーナーの経験や獲得したスキルが伝えやすいため、早期に成功体験を得て自信を持てる」という理由からです。
しかし、ほとんどの企業は、新人配属は現場任せです。「オンボーディング」という概念が語られるようになりましたが、まだ科学的に取り組む動きは弱く、偶然に任せているのです。結果的に、新人側から考えれば「運/不運」に委ねられているのです。
実は、新人のキャリアにおいて「最初の配属での評価がその後キャリアに一番影響を与えている」という結果があるのです。しかし、多くは「個人の能力や、やる気がなかった」という個人側の問題にしています。「配置を決めた人事」「育成を担ったトレーナー」「新人を預かった現場マネジャー」と登場人物が多数になり「会社側」に責任が来ます。それを嫌うのか、本人の問題にすり替えているのです。
折角、時間とコストをかけて採用した〝潜在力のある人材〟の将来性を真剣に顧みないのです。当然、会社の損失にも繋がるのですが…
自社オリジナルの「育成方程式」の構築がビジネスでも“マジック”を起こす

オフシーズンの話題を独占している新庄剛志監督。BIGBOSS流の育成の方程式は結果となって表れのだろうか/Getty Images
さらに2年目になると、今度は同質ではなく、異質でありながら補完する関係=「アドバイザー」になる先輩に付けるのが効果的です。基本の型が出来て、次に「幅を広げるため」なのです。
つまり、入社3年までの初期段階における育成には、〝相性を考慮〟して「誰が、いつ教えると良い」という関係を設計することが成功法則なのです。
現場で仕事を通じて教えることをOJT( On The Job Training)と言いますが「OJTという名の放ったらかし」と揶揄する表現があります。つまり、多くの企業では「無策」なのです。
一方で「ロミンガーの調査」から検証された『7:2:1の法則』(7割が現場で学ぶ)があり、「現場で育てる」ことの効果が語られます。じつは、そのために「誰が教えるか」という『育成の相性』を設計する必要があるのです。
我々の顧客であるセプテーニホールディングでは自社オリジナルの「育成方程式」を構築されて、オンボーディングを科学的に取り組んでいただいています。トレーナーだけでなく、受け入れるチームも含めて「育成のための相性」を組み込んでいるのです。それを「会社方針」と決断されたのは、やはり経営トップでした。
この『成功法則』をきちんと取り組んでいだたければ、経営者や人事担当役員は、「〇〇マジック」の称号を得た名監督になれるのです。
さて、今年、新庄さんことBIGBOSSは、どんな監督になるのでしょうか?
PROFILE
- 古野 俊幸(ふるの としゆき) | 株式会社ヒューマンロジック研究所代表取締役
- 新聞社、フリージャーナリスト、出版社を経て、1994年にFFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のための会社を設立して、現在に至る。現在まで約800社以上の組織・人材の活性化支援。チームの分析と編成に携わった実績は60万人、約6万チームを数える。チームビルディング、チーム編成の第一人者。昨年、大人気漫画を題材にFFS理論を説いた『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』(日経BP)が10万部越えの大ヒットとなり、今年4月には『ドラゴン桜とFFS理論が教えてくれる あなたが伸びる学び型』(日経BP)を上梓した。
【スポーツと自己分析が教えてくれる「あなたをアップデートする方法」/古野俊幸~back number~】
【♯01】<前編>バドミントン元日本代表 潮田玲子さんが教えてくれた「弱みを受け入れる」ということ
【♯02】<前編>サッカーも営業も「自分の持ち味」を知っている人は成功する
【♯04】<前編>失敗を成功へと導く。リーダーに必要な「声かけ」のポイント
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