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名波浩×佐藤寿人│「リーダーシップの資質と無敵の組織論」

元サッカー日本代表の佐藤寿人氏の連載イベントがスタート! 記念すべき第一回のゲストは、SPODUCATIONにて過去6回の連載イベントのMCを務めた名波浩氏。昨年、惜しまれながらも21年間の現役生活にピリオドを打った佐藤寿人氏は、引退後は、指導者として育成の道に進む意気込みを示唆しています。現役時代は日本を代表するストライカー、司令塔としてチームを牽引してきたお二人が考えるリーダーシップ論とは?(※2021年2月に収録)

監督とキャプテンの視点「6・2・2の法則」とは?

──今日は、リーダーシップに求められる資質、というところで。まさにお二人はチームのリーダー的な存在のイメージが強いと思います。まず名波さん、実際に監督という立場がリーダーにはまるものなのか、そのあたりはどうお考えですか。

名波 このテーマでいくと大枠というか、外枠だとは思いますが、責任のある立場と考えると、メンバーをガラッと変えるとか、システムを前監督から変えてしまうとか、トレーニングのやり方から時間設定まで、ありとあらゆるものをコントロールするという意味で、監督というのは間違いなくリーダーシップをとらなければならない立場だとは思いますね。

 

──その時に、一番意識していることは?

名波 一番かどうかはわかりませんが、選手をどうこちら側に向かせるかということは重要だと思います。それが元日本代表のオフト監督だったんですけど、彼が個人的に教えてくれたのは「6・2・2の法則を忘れるな」ということでした。60%は最初からこちらを向いてくれる。20%はいろいろなことで悩んでこちらを向いてくれない。そして、どっちにも振れないような20%がいる。最後の20%を自分の方に持ってきて、8割くらいのチーム作りができれば間違いなくチームはうまくいく、ということでしたね。これはいろいろな公演でたまに話すんですけど、学校、社会でも、どんな局面でも使えると思うので。これは肝に銘じてやろうと思って、(監督を)始めました。

 

──チームのキャプテンはよくやられていたと思うんですけど、今の話を聞いて、佐藤さんいかがですか。

佐藤 すぐメモしました。

名波(笑)。

佐藤 選手側でずっとやってきている中で、キャプテンをやらせてもらう時間も長かったんですけど、やっぱり選手が30人いると、30人がそのシーズンで幸せなことというのはほとんどなくて。15、6人くらいが常に試合に出続けて、そこに絡むのが10人くらいで。全く絡めない人も10人くらいいます。その選手たちも、それぞれ考えていることや、ストレスを感じていることも全然違うので、そこをいかに一つの目標に向かってベクトルを合わせていくのか。そこが大事なんですよね。その面では、いろいろな状況に置かれている選手をしっかり把握するというのは、チームメイトであってもすごく大事なことだと思ってやっていました。

 

人を観察して、把握する。統べる者として大切なこと 

──リーダーシップ=組織論みたいな話になると思いますが……よくいわれるのが、「変に全員に気に入られようとするのが一番のストレスになる」というところのヒントなのかな、と思いました。名波さんそのあたりはいかがですか。

名波 僕がもし佐藤さんがキャプテンの時のチームの監督をしたら、佐藤さんには、いわゆる僕の工作員になってもらうと思います。佐藤さんと仲のいいメンバーをさらに工作員にさせる、という意味で。3〜4人の工作員を作って、選手がどういうことを感じているのか、どういうストレスがあるのか、そういうコミュニケーションをしっかりととりますね。とはいえ全員にいい顔をするのではなくて、全員の意見を代表者が吸い上げてもらって、うまく反映できることは反映させる。そうではなくできる、できないという点に関してはしっかりと○×をつけてあげて、チーム全体が進むべき方向性を示してあげる。これは勝敗とは別の考え方ではありますけど、こういうことをやっていきますね。今の30歳以下くらいの子たちのメンタリティと、団塊の世代の人たちの考え方は全然違うので、その世代に合わせた落とし込みをするという意味でも、工作員となってくれる選手の意見というのはものすごく大事だなと思いますね。

 

──なるほど。あと、事前の質問にもあったのですが、年上の人とか、そういう人たちを巻き込むことというのは、意外と組織の中だと大変じゃないですか。そういう時は、どのようなコミュニケーションの仕方などは?

名波 現役の時は、キャリアのある人たちの包容力……とにかく若い選手の意見をしっかりと吸い上げてくれて、チームに良いものは全部取り組んでいこうという感じのスタイルの人たちが多かったです。なので、非常にやりやすかったですね。監督になってからは、ちょっと煙たいであろうベテランの選手を僕たちがうまく乗せて、若い選手にうまくいじってもらう、みたいな……そこのバランスがちょうどいい時が一番勝てますね。そのベテラン選手が試合に出られないとか、ベンチ外とかになった時に、若い選手がいじれなくなるのです。そのアンバランスの時にいかに若い選手が力を発揮するかということが大事ですね。ベテラン選手が力関係で今は下だと思ってくれれば、バランスが整って勝てるようになるんですよね。このバランスコントロールということこそ監督の力なのかな、ということは痛感しました。

 

──確かに、そういうことはよくありますよね。ベテランになればなるほどプライドは高くなるから、どの組織でも距離をとっちゃう人はいると思うんですよね。その時に間に入ってあげることができる、というのは、いいリーダーなのかもしれない、ということですね。

名波 そうですね。

佐藤 どれだけ自分以外の人に興味を持つかということは、大切なことだなと思っています。自分のキャリアだけに目線を向けていると、なかなか組織としてもいい方向に行かないので、個人的にもやりにくくなると思います。いかに周囲の状態を見ることができるか、というところが大事だと思いますね。

 

岡田武史監督の語彙力とリーダーシップ

──お二人から見て、今までのサッカー人生の中で「この人リーダーとしてすごいな」と思った人はいますか。

名波 やっぱり岡田武史(元サッカー日本代表監督)さんはすごいですね。サッカーに関係のない文献を例に出して、こういうメンタリティをみんなに植えつけようとか、このように協力・協調しながらやっていこうというのを、サッカーの試合前のミーティングとかでさらっと言える人だったんですよ。勉強家でもあるでしょうね。自身に選手や監督としてのキャリアがそこまでないので、自分や選手に自信をつけさせるための努力というのは、並大抵のものではなかったんじゃないかなというのは感じました。

 

──佐藤さんはいかがですか。

佐藤 僕も名波さんと同じで、岡田さんはすごくリーダーシップがある人だと思います。共有できるものや言葉を選手に伝えてくれていたので。

 

──なるほど。リーダーとして素晴らしいなと思っている人が同一人物だったわけじゃないですか。(リーダーとして素晴らしい人というのは)「言葉」で人を動かす能力がすごいということなのですかね。

名波 そうですね。岡田さんは、組織を作る上で語彙力で勝負、という感じだったと思います。でも、責任という意味では、「負けたら全部責任は自分にくる」というのは、本人も自覚していたでしょうし、周りにもそういうことは強く言っていました。だから選手には、やれる範囲で自由にやっていいよ、と言ってくれていた気がします。

 

──なるほど。先ほどの「6・2・2の法則」の話と紐づけると、組織の中にはどうしても、組織に反発するというか、足並みをそろえない選手がいると思います。そうした時に、そのような選手とどのようなコミュニケーションをとりますか。

名波 僕はそのような選手がアクションを起こしている限りは、ずっとコミュニケーションをとっていますね。絶対に投げません。監督を始めるときに初めてスタッフミーティングをした時も、「選手のことをダメというな」と指導しました。言った時点で、そのスタッフは絶対に罰金だ、と。ダメという言葉ほど、線引きが簡単なものはないのです。もしもそのような周りに反発するような子がいたら、責任のある立場である自分が必ず行って、声をかけていました。

 

──「ダメ」という言葉を出すことが、「無責任」というイメージですか。言ってしまうことは楽なわけですから。

名波 そうですね。どんな選手にも平等に接していくことで、「いつも話を聞いてくれている」という意識付けをしていけば、問題のある選手の行動も少しずつ直ると信じていました。最終的にずっとはぐれものの選手もいたのですが、それでも最後まで言い切ったとは思っています。契約した以上は、その子を最後まで面倒みなければいけない責任というものがありますから。

 

──なるほど。佐藤さんは、今の話を聞いてどうですか。

佐藤 そうですね。単純に聞き入ってしまいました。やっぱり自分は選手としての立場しかなかったので。ジャッジするという立場にはなかったですから。ただ、もちろん、チームメイトとしてどういう状態なのかということはしっかりと見ている中で、それに対して何ができるかということは、仲間としては考えていました。あと、選手目線だと、選手が変わらなければそこには入っていけないだろうな、というドライな面もありました。選手も個人ではあるので、「変わらないんだったらしょうがないな」というところも感じていました。立場が違うので何とも言えないのですが、名波さんのような監督の立場の方が、我慢強く向き合ってくれるのかな、というのは感じました。

 

チームリーダーと監督が協力し合えば無敵のチームに

──お話を聞いていて、リーダー論、というのも、結局プレーヤーと監督側の立場の考え方の違いという点はわかりやすかったなと思います。

名波 今置かれている立場を自覚して、チームの中での立ち位置を明確にしながらやっていけば、組織としては絶対にうまくいくと思いますね。

 

──実績を出すチームリーダーがいて、全体を把握する監督がいることで、組織としては大きな力が発揮できるということですよね。

名波 ファンやサポーターの人は、「この選手がリーダーだ」ということを思うのではなくて、家督や選手が、「この人にリーダーシップを取ってほしい」という人間が自然にリーダー像を出してくれるような感じになると、よりチームというのはうまくいくと思います。

 

──サンフレッチェ時代の佐藤さんが、まさにそのような感じでしたよね。

佐藤 そうですね。結果に直結するように責任感を持ってやっていました。あとは何よりも、自分の結果ということよりも、いかにチームが勝つことで評価される、というふうにやっていました。最終的に自分のプレーがどうだったか、ということももちろんありますけど、まず、チームが勝つというところを全員で共有できるようにというふうに思っていました。自分が発信することで、選手が同じ考えに近づくのでないかと思ってやっていました。

 

──監督がそこをわかって接していたから、その時サンフレッチェは強かった、ということですね。

佐藤 そうですね。そこのコミュニケーションが非常に多くできたかな、とは思います。やはり、腹を割って話さないとわからないですし。いい時だけではなくて、結果が出ない時も含めて、常に「向き合う」ということは大事だったのかな、というふうに思いますね。

 

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