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木村文子 × 鷲巣大輔│<第1回>スポーツフィールドで学ぶMBA式ビジネススキル「オリンピアンから学ぶ、目的達成のための戦略思考」

SPODUCATIONでは、「難しい」と捉えがちな「MBA」のビジネススキルをスポーツフィールドを例に、誰でもわかりやすく解説するオンラインセミナーを開催。指導現場においても、暗黙知としてされている部分を形式知化し、スポーツ選手の持つアート的側面を、サイエンス的側面で紐解いていく。第1回はゲストに東京オリンピック陸上競技女子100mハードルに日本代表として出場し、現在は広島大学大学院人間社会科学研究科に在学中の木村文子選手、講師に鷲巣大輔氏(グロービス経営大学院准教授/株式会社FP&A研究所代表取締役)を招き、「戦略」をテーマに対談を行った。競技やビジネスにおいてよく耳にする「戦略」の概念を、木村選手の実体験を通じてMBA教員の鷲巣氏がわかりすく解説する。(※2021年11月に収録)

 

鷲巣 まず最初に私の簡単な自己紹介をさせてください。私は社会人が経営学を学ぶグロービス経営大学院という学校で15年ほどMBA(Master of Business Administration)の講師をやらせてもらっています。実はグロービス経営大学院にはビジネスパーソンだけでなく、お医者さんや現役のアスリートの方も通われているんです。それはなぜかというと、MBAは普遍性があり、世の中に応用できることを広く扱っているからなのだと思います。

 一つひとつの事象は具体的でも、それを体系立て、抽象化しながら万人に置き換えられるように再現性を高めるのが経営学だと思っています。今日はMBAの経営学 x アスリートとして、オリンピアンである木村選手の思考を体系化し抽象化して、1割でも2割でも視聴されている皆さんの日常のヒントになるようなものを伝えることができればと考えています。

 本日のテーマが「戦略」ということで、この言葉は競技スポーツ、そしてビジネスのみならず、世間においても広く使われる言葉です。とはいえ、抽象的であり掴みどころがない。そこで本日はビジネスにおいて「戦略」がどのように捉われているか、参考事例を紹介しながら、木村選手とお話していきたいと思います。

 

戦略とは資源をいかに組み合わせて目的を達成するか

鷲巣 各社でマーケティング部門を育成・指揮してきた著者による書籍『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(音部大輔著)において、「戦略とは目的達成のために自分の持っている資源をいかに組み合わせるかの指針である」と定義づけられています。ポイントとなる「目的」と「資源」について、簡単な事例をご紹介しましょう。

 ある村に猪が現れ、農作物を荒らしています。これは村人にとっては解決すべき問題ですね。「資源」として村には動ける若い衆が10人ほどいるのですが、彼らは猟銃を扱えません。猟師を雇うとしても一人分しか資金はない。そんな状況でいかに資源を組み合わせて目的を達成するかを「戦略」という文脈で著者の音部さんは語っています。

 猪を退治する、猪を追い出す、飼いならす……など、何を目的とするかによって創造性が出てきます。資源に関して追求してみると、10人の男衆は地元の人間で地理を知り尽くしていて、家には鍋と釜がある。つまり、鍋と釜でかき鳴らすことで、猪を見晴らしのよい場所へ誘導することができるわけです。そこに猟師一人を配置しておけば猪を退治することできる。これが資源をどう解釈して目的を達成するかの「戦略」なのです。

 木村選手がものすごく高い目標を達成するために、いかにしてご自身が持っている資源を解釈して達成してきたのかを聞いてみたいと思います。前置きが長くなってしまいましたが、木村選手よろしくお願いいたします。

木村 こちらこそ、よろしくお願いいたします。

 

木村選手による資源の解釈と捉え方

鷲巣 木村選手は本当に輝かしい経歴をお持ちなのですが、僕が興味を持ったのが、木村選手の所属校についてです。高校、大学と「ザ・強豪」ではないところを選択されたとのことなのですが、その判断の理由を教えてもらえますか?

木村 高校を選択するときにすでに教員になるという目標がありました。陸上競技を続けながらも、勉学ができるところを視野に入れていました。また県の強化合宿で一緒だった選手たちの中で、同じ高校を志望する仲間がいたことも心強かったです。

鷲巣 スポーツの強豪校は設備が整っていて、コーチ・スタッフが充実し、学校としてのバックアップもあります。そんな資源がもしかしたら足りなかったのではないかと想像しますが、その点はいかがでしたか?

木村 部活動の顧問の先生が陸上専門ではなかったので、たしかに「資源が整った」環境ではなかったのかもしれません。でも、先生が陸上の専門家ではなかったがゆえに、対等な目線で一緒になってトレーニングを決めていくことができました。

鷲巣 もし強豪校に行っていたら、トレーニングメニューがすでに確立されていることから、「やるだけ」になっていたかもしれませんね。考えることを怠っていた可能性もあると。

木村 そうですね。資源が整った強豪校に行っていたら、これほど長く競技に関わっていなかったかもしれません。

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成果を上げる思考法とは?

鷲巣 この「考える」ということに関して。例えば漫然と考えていてもダメだと思いますが、成果が上がる考え方になるような工夫はされていたのですか?

木村 まずはゴールをどこに設定するかを決めた上で、それを達成するための小さな課題を洗い出し、克服していく作業をしていました。そこは高校も大学も先生が共通して教えてくださったことでした。

鷲巣 逆算思考というものですね。高校生の時、具体的にどんな取り組みをされていたのですか?

木村 私は高校3年間インターハイに出場することができました。高2の時は広島県大会の時点で全国ランキング1位になったので、全国でも活躍できると思ってインターハイに臨みました。でも結果は準決勝敗退で、優勝者は同じ広島県の選手だったんです。おそらく私は県大会で優秀な成績をおさめたがゆえに、全国で一位になるための努力を怠っていたのかもしれません。そう考えて、先生と一緒に一年後のインターハイ優勝を目標に設定して取り組むことになったんです。

鷲巣 なるほど。

木村 年度が変わった5月の大会で、私は100mハードルだけでなく走り幅跳び、100m競争、4x100mリレーなど複数種目にエントリーしたんです。通常であれば単種目で記録を狙いたいところなのですが、私は練習と試合を兼ねる大会と設定しました。

鷲巣 つまり1年後から逆算して具現化されるように準備を進めていたということですね。途中から思い描いていたストーリーに変化が生じることはなかったですか?

木村 地域大会となる中国大会で、100m競争に出ていたがことが影響して、走り幅跳びで歩幅が合わなくなり、あわや決勝前に敗退しそうになりました。結果的には最低ラインの5m70を越えられたのですが、そこからいつでも5m70を越えられるようになるにはどうしたらいいのかの練習に取り組むようになりました。

鷲巣 逆算思考は思い描いた通りにならなかった場合に、いかに軌道修正ができるかが重要となります。それを木村選手は先生と一緒になって考えることができたというわけですね。大学に入ってから変化はありましたか?

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チーム戦で議論を繰り返し、感覚を具現化

木村 高校では先生がメニューを組み立ててくれましたが、横浜国立大学陸上競技部では自分たちがメニューを考えて、伊藤信之先生に見てもらうようになりました。私はそれまでインターハイ優勝など結果は出ていたと思うのですが、それは感覚的な部分が大きかったんです。練習の効果を考えたことがなかったので、伊藤先生や大学の先輩たちに聞くことで学ぶことは沢山ありました。

鷲巣 メニューを自分で考え、試し、上手くいかなかったら検証して修正する。その繰り返しをしていたということですね。感覚に頼らず、先生・仲間と納得できる答えを探していった。

木村 まさにその通りです。先生・同期の仲間と常に議論ができる環境がありました。それが活きていたと思います。

鷲巣 陸上競技は個人種目で、生まれ持った感覚に頼る部分が大きいと思っていました。でも、今のお話を聞いていると木村選手は監督・仲間のチカラを借りながら考えて、感覚を具現化する作業を繰り返してこられたのですね。

木村 それが前に進むための一番の原動力になっていると思います。だから私はそこまで秀でた才能を持っていたわけではないんです。大学の伊藤先生ともよく話しましたが、世界で活躍する選手というのは、ずば抜けた才能を持ち合わせているんだそうです。それでも私は周りのサポート、チカラをお借りしてオリンピックにも出場することができました。チャンスは誰にでもあるということを伝えたいと思っています。

鷲巣 本日のテーマである「戦略」に紐づけると、資源の解釈にはものすごく可能性があるんです。正しく解釈ができた人は、成果が出るし、木村さんはそれを実践されてきた。非常に興味深いです。

 

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