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野澤武史×ニールソン・ブレンデン×伊達圭太│「状況判断ができる選手を育てるコーチングメソッド 」

目まぐるしく状況が変わり続けるラグビーでは、適切な対応を行う個々の「状況判断力」が必要になる。今回は、仙台育英高校ラグビー部のニールソン・ブレンデン監督、城東高校ラグビー部の伊達圭太監督をゲストに、「スポーツを止めるな」代表理事であり、元ラグビー日本代表の野澤武史さんが、状況判断のコーチングメソッドについて二人のラグビー指導者に迫った。(※2022年2月に収録)

高校ラグビー指導者二人のバックグラウンドとは

野澤 今日のゲストは、お二方ともに現役でユース世代を教えている指導者、仙台育英高校ラグビー部のニールソン・ブレンデン監督(以下、愛称の「ブリ」)、城東高校ラグビー部の伊達圭太監督です。 よろしくお願いします。

ブリ&伊達 よろしくお願いします。

野澤 いつものようにブリ先生、圭太先生と呼ばせていただきます。今日のゴールは、状況判断できる選手を育てるためのヒントを見つけ出すことです。ラグビーでは「ディシジョンメイキング(意思決定)」という言葉もありますね。まずは、ブリ先生のバックグラウンドについてお聞かせください。

ブリ 私は1993年にニュージーランドから日本に来て、ずっとラグビーに携わっています。仙台育英高校にラグビー留学して、流通経済大学に進学。卒業後は「NECグリーンロケッツ」、「コカ・コーラウエストジャパン」、「釜石シーウェイブス」とそれぞれのチームでプレーしました。引退後は母校の仙台育英高校に戻って、ラグビー部のコーチに就任しました。仙台育英では今7年目がちょうど終わるところで、去年からは監督を務めています。一度もニュージーランドに戻らず、27、28年になるので、日本の方が長くなりましたね。

野澤 最初に日本へ来て、日本流のコーチングを受けたわけですよね。「信じられない!」みたいなカルチャーショックはありましたか?

ブリ 当時の仙台育英も、ニュージーランド人のコーチに、日本の監督という体制でした。日本に来て最初にびっくりしたのは、練習後のメニューが大変なことです。うさぎ跳びを二周に、アヒルのようにしゃがんで歩くトレーニングが二周……。況判断というよりも心、魂を鍛える練習という感じがしました。

野澤 ラグビーで状況判断を重視するようになったのは、どのあたりからでしたか?

ブリ ニュージーランドでは小さい頃からスキル面の指導を受けていたので、状況判断から離れたことはありませんね。流通経済大学でもニュージーランド人のコーチがいて、状況判断を大事にしていました。2015年に仙台育英へコーチとして戻ってからも、状況判断を重視した指導を取り入れました。東北と言えばスクラム、ラインアウトモール、リモール、ピックアンドゴーといったプレーが主流。試合ではそういうプレーも大事ですが、使うタイミングの状況判断が大事です。あとは、型にはまらない展開ラグビーも取り入れてやってきましたね。

野澤 元々ニュージーランドでラグビーを始めたときから、状況判断が近くにあったのですね。状況判断ができた方が楽しいし、勝ちに近づくということも、自分で経験してきたのでしょうか?

ブリ そうですね。小さい頃は、ボールキャリアでの状況判断がすごく多くて。ボールを持っている時にどうするか。僕はそこまで身体が大きくないから、強くなるために技術を使っていかないといけませんでした。トップに行くためには、状況判断がすごく大事です。

野澤 圭太先生のバックグラウンドについて、お聞かせください。

伊達 今は地元の徳島県にいます。徳島では幼稚園の頃から、ラグビースクールでラグビーに携わっていました。現役の時は、あまり代表カテゴリーには縁がありませんでしたが、城東高校を卒業した後は、世界の坂田好弘先生がいる大阪体育大学へ進学しました。身体は大きい方なのですが、怪我が多くて……。当時は、感覚でラグビーをやっていた部分がありました。今は、ようやく指導をさせていただいています。毎日の練習が失敗の連続ですが、ラグビーを「分解」しながら教えるのを楽しく感じています。ある程度のルールがある中で、どれだけ自分を活かせるか。その楽しさを、選手たちにも教えてあげられたらなと考えています。

ブリ さっき身体が大きいと言っていましたが、身長どのくらいですか?

伊達 185センチです。一応スタンドオフやセンターをやっていたので、大きい方とは言われていました。体重は、現役の時に93、94キロありましたね。

ブリ めっちゃでかいじゃないですか。185センチ欲しかったね、野澤さん(笑)。

野澤 ほしいほしい。あと20センチほしかった(笑)。

伊達 身体を大きくするために、夜11時くらいまでウェイトをしていたので警備員の人と仲良くなりました(笑)。根性を学んだ高校時代、スキルを学んだ大学時代だったなと思います。

ブリ いいですね。僕は、前半はニュージーランド、後半は日本の文化を経験してきました。ランパス(走りながらパスの練習)は、今の東北ラグビーでも結構残っている文化。人によってはボールに触らず走り回るだけで、大変だなと思います。僕はクロスカントリーとかやっていたので、その辺は大丈夫でした。

 

状況判断には「物差し」と「すり合わせ」が欠かせない

野澤 今のラグビーは、どんどん速いスポーツになっています。去年の花園(全国高等学校ラグビーフットボール大会)を見ると、インプレー(ボールが動いている)の時間が前年よりも一試合あたり二分くらい減っています。その一方で、一つひとつのプレー時間は短くなっている。たとえば、高校ラグビーでは6分半とか7分とか、信じられないような長いプレーがあって、ずっとピックアンドゴーでつないでいました。でも去年ルールが変わって、それがほとんどなくなりました。最近の花園の試合だと、80%くらいは60秒以内でプレーが終わるようです。より速さが求められるラグビーの中で、状況判断しなければならない。ラグビーには止まっている時間もあるので、「静」と「動」、それぞれの状況判断が必要です。そんな中で、お二方が日頃作っているチームでは、どんなことをグラウンドで実践されていますか?

伊達 あまり僕は、マーカー(目印)を使う練習をしないようにしています。時期によっても違いますが、より状況判断をともなう練習が多いです。環境や時間は限られていますから、工夫すべきだと思っています。あとは、人対人の競技なので、アクション・リアクションをすごく大事にしていますね。練習はもちろん、日常生活でも先生や親、友達と対話する時間があります。相手にレスポンスするためには判断が必要なので、いい練習になります。時には厳しく言うこともありますが、そこで「はい、はい」と適当に返すのか、しっかり判断して返すのか。グラウンドの内外関係なく、そこが大きなポイント。人と人のつながりの中で、どんどん状況、環境を動かしていくよう意識していますね。

野澤 「アクション」は、どんなイメージで使っている言葉ですか?

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