SPODUCATIONでは、「難しい」と捉えがちな「MBA」のビジネススキルをスポーツフィールドを例に、誰でもわかりやすく解説するオンラインセミナーを開催。指導現場においても、暗黙知とされている部分を形式知化し、スポーツ選手の持つアート的側面を、サイエンス的側面で紐解く。第2回はゲストに東京オリンピック2020ホッケー女子日本代表として出場した永井友理選手、講師には人材育成や経営戦略支援に携わり、「株式会社学びデザイン」代表取締役社長を務める荒木博行氏を招き、「クリティカル思考力」をテーマに対談を行った。ビジネスはもちろんスポーツでも注目されている概念を、永井選手の実体験を通じて、人材育成のスペシャリストである荒木氏がわかりやすく解説する。(※2021年12月に収録)
目次
ホッケーという競技の特性とメンタル
荒木 まず簡単に自己紹介をしておきます。僕はさまざまな会社のアドバイザーとして、“学ぶ場”を提供する会社を経営し「頭の使い方、考え方」を教えています。教育業界に長くいたこともあって、上は70歳越え、下は幼稚園児と幅広い指導経験があります。スポーツ選手にも考え方のアドバイスをしているので、今回はとても楽しみにしていました。友理さん、よろしくお願いします。まずは、改めてホッケーの魅力をお聞かせください。
永井 ホッケーは、簡単に説明するとスティックを持ってボールをゴールに運ぶスポーツで、サッカーに似ています。シュート、ゴールシーンが魅力とよく言われますが、私が思うのはスポーツマンシップにのっとっているところ。スティックやボールは凶器のようにも見えますが、そこまで大きな怪我はしません。そこが魅力かと思います。
荒木 スティックもボールもすごく硬いので、間違えば骨折とかしてしまいますよね。僕が10年くらいやっているラグビーにも似ている部分があります。ボディコンタクトが大前提のスポーツで、猛ダッシュしてくる人に正面からぶつかることが日常茶飯事。常に怪我や恐怖心と隣り合わせなので、メンタルが大きく影響するスポーツです。ホッケーのスティックも凶器みたいですが、メンタル面でどういう影響がありますか?
永井 恐怖心という意味ですよね? 正直、いまだに「怖い」という気持ちはあります。ゴルフボールを大きくしたような硬さで、当たったら痛いのは何回も経験して分かっています。でも試合になると違って、逆に「自分の身体で止めてやろう!」という気持ちになるんです。相手にゴールを狙わせないように、身体ごとボールに当たりに行ける、不思議なメンタルになります(笑)。ホッケーをやっている皆も、そう思っているかもしれません。
荒木 なるほど。おそらく、スイッチが入っている人と、入っていない人の違いかもしれませんね。その違いは、身体が動き出すまでのコンマ数秒のずれにつながります。ラグビーだと明確で、怖がって相手に飲まれると、タックルするポーズだけして言い訳する選手もいます。精神的にどちらが優位かは、すぐに分かります。負けると、どんどん突破されてしまうので。ホッケーでも、そういったことはありますか?
永井 ありますね。特にシュートに対しては、すごくあります。フォワードは「タッチシュート」を狙いに行くのですが、その時にスライディングをかけられるかどうか。味方が浮いたボールを打ってしまうと、ただ当たって怪我することもあります。自分が強いメンタルを持てている試合の時は、気にせずに飛び込みに行っています。それもコンマ数秒の差だと思いますね。
自分が引っ張るか、周りを活かすか――キャプテンの思考
荒木 今日お話しする「思考力」というのは、すごく難しいテーマなんです。考えることは、ある意味で恐怖心を思い出すことでもあるわけです。「冷静に考えると、ここで身体ぶつかったらめっちゃ痛いよね」と(笑)。考えることで、身体が動かなくなる瞬間はありますよね。それをなくすためには、動物のように本能的に動けるモードに入る必要があります。一方で友理さんは、キャプテンとしてゲームのコントロール、チームの状態の見極めという頭の使い方も必要ですよね。そのバランスは、どう取っていますか?
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