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【♯01】塚本亮│ネガティブ思考を払拭! 子どもの「自己効力感」を伸ばすためにできること

 

子どもの成長のために、良かれと思って言っていることが実はマイナスに働いていたり、「育てよう」と強く思うほど、「育たない」ことにつながる。そんな悩みをみなさんお持ちなのではないでしょうか? 『すぐやる人とやれない人の習慣』(シリーズ40万部突破)の著者であり、心理学に基づいた指導法で教育コンサルタント、メンタルトレーナー、心理カウンセラーとして活躍する塚本亮さんが、子どもの「心」を強くするための習慣ついて連載でお届けします。

文=塚本 亮

 

「自分ならやればできる!」と思えない日本の子どもたち

2008年に日本青少年研究所が実施した国際調査によると、「自分はダメな人間だと思う」と感じている日本の中・高校生は、他の国に比べて多く、自分の能力に対する信頼や自信に欠けている子どもが多いと言われています。日本の子どもたちの自己効力感は相対的にみて低い。

心理学には「自己効力感」という言葉があります。ご存知の方もおられるのではないかと思います。カナダ人心理学者のアルバート・バンドゥーラが1977年に提唱したものですが、自己効力感とは、「自分はこれをやり切ることができる!」「自分ならやればできる!」などと、自分の能力を信じる、自分への期待感のことです。先ほどの調査結果などから、あまり子どもの自己効力感を育てることに対しての理解がまだまだ浸透していないとも言えそうです。

自己効力感は、子どもたちの行動に大きな影響を与えます。 自己効力感が高い子どもは、さまざまなことに積極的にチャレンジする傾向にあり、自分で計画を立てたり、行動にメリハリが出やすくなります。困難なことにぶつかった時も自分で乗り越えようとします。

 

スポーツでも大切な自分を信じるチカラ

逆に自己効力感が低い子どもは、「自分にはできそうにない」「きっと失敗してしまう」などとネガティブに考え、課題に挑戦することを避けがちになってしまいます。困難なことにぶつかった時には無気力になりやすく、自分で乗り越えようという気持ちはあまり持てません。そして自己効力感が低い子どもが「できないんじゃないかな」と思いながらも何かに挑戦してそれが失敗に終わると「やっぱり自分はできないんだ」という悪循環に陥ってしまいます。

 全ての子どもたちにとって、もちろんスポーツを楽しむ子どもたちにとってはこの自己効力感はとても大切です。練習した分だけ技術が向上したり、試合でいい結果が出ているときは自己効力感を高く持つことができますが、いつもそうとは限りませんし、むしろうまくいかないことが多いと思います。頑張って練習してもなかなかうまくならないことや結果が出ないことはよくあることです。

 

「自己効力感」を高めるための3つの習慣

でも、そんな時こそ親や周りの大人が子どもたちの自己効力感を高める働きかけを作ることが肝要です。

ではこの自己効力感を高めるためにはどんなことを考えればいいでしょうか。

 

今回はそのヒントを3つご紹介いたします。

 

①小さな成功経験を積ませる

小さな成功体験は自己効力感を高める上でとても効果的。「頑張ったらできた」という目標設定を一緒に立てることが大切です。「できた」から「次もきっとできる!」と自信を持つということです。できないことが続いてしまうと自己効力感が低下して「やりたくない」となってしまいます。

イチローさんは「ここまで来て思うのは、まず手の届く目標を立て、ひとつひとつクリアしていけば最初は手が届かないと思っていた目標にもやがて手が届くようになる ということですね」と言ったそうです。

高い目標や理想を持つことはいいことですが、それがもしかしたら高すぎる目標であることを子どもが気づいていないかもしれません。それによってうまくいかないことが多いようであれば自己効力感は下がってしまいます。

とは言え、最初から子どもが失敗しないように親が口を出してしまうと、この成功体験を積む機会が失われてしまいます。むしろ失敗した時にこそ、「どうやったらこれを乗り越えられるだろう」と一緒に考え、小さな一歩を踏み出せるようサポートする。親として困っている子どもをサポートしたくなるのは当然なのですが、自分で頑張ろうとしているときは見守る。そして、うまくいかない時は一緒に乗り越える方法を考えて、小さな成功体験を積ませると子どもたちの自己効力感は高まり、次のチャレンジに向かっていくことができるようになります。

 

②認める、褒める

親はいつも自分のことを信じてくれているという感覚をしっかりと子どもに感じさせることが自己効力感を高める上では効果的です。中でも声がけが大切でですね。また別の機会に声がけについてはより詳しくお話できればと思っていますが、子どもが何かを達成したときには、しっかりと褒めてあげる。うまくいかなかった時も、努力を褒めたり、自分でチャレンジしようと思ったことを褒める。「親は自分を信じてくれている」「親はいつも見てくれている」と子どもが感じることで、自己効力感は高まります。

周りから「あなたならできる」という言葉をかけられた子どもの自己効力感は高まるとも言われていますから、ぜひちょっとした声がけで子どもの心に火をつけましょう。

 

③憧れの存在を見つける

他者の行動や努力、成功の様子を観察することで、自分にもできそうだという感覚を引き出すこともできます。テレビでアスリートが懸命にトレーニングしているシーンを目にすると「自分も頑張ろう」と感じることはないでしょうか。それがまさにこの観察によって誘発されたモチベーションです。

この点においては子どもにどの環境を与えるかがとても大切ですね。頑張っているチームメイトや憧れとなるような先輩がいる環境では子どもも自然と「頑張ろう」となりやすい。「もっと頑張りなさい」と言われてもなかなか気持ちは高まらないものですし、むしろ余計に嫌になってしまいます。そうではなく、子どもたちが活き活きしている環境を探してあげる。環境を変えることで心も変わりますから、憧れの存在に触れられるような環境を一緒に探してみてはいかがでしょうか。

――第2回に続く――

 

PROFILE

つかもと・りょう
ジーエルアカデミア代表取締役、マッチャモーレ京都山城代表、同志社大学嘱託講師。高校時代、偏差値30台、退学寸前の問題児から一念発起し、同志社大学に現役合格。卒業後、ケンブリッジ大学大学院で心理学を学び修士課程修了。帰国後、京都にてグローバルリーダー育成を専門とした「ジーエルアカデミア」を設立。心理学に基づいた指導法が注目され、国内外の教育機関や企業、トップアスリートなど6000人に対して世界に通用する人材の育成・指導を行っている。著書は『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)など多数。新著「ヤバいモチベーション完全無欠のやる気を手にする科学的メソッド50」(価格:1,500円税抜/発行:SBクリエイティブ)発売中。

 

【強い心の育み方/塚本亮~back number~】

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