COLUMN

【強い心の育み方/塚本亮】
<第4回> VUCA(ブーカ)時代を生き抜く「レジリエンス」の高め方(後編)

PROFILE

つかもと・りょう
ジーエルアカデミア代表取締役、マッチャモーレ京都山城代表、同志社大学嘱託講師。高校時代、偏差値30台、退学寸前の問題児から一念発起し、同志社大学に現役合格。卒業後、ケンブリッジ大学大学院で心理学を学び修士課程修了。帰国後、京都にてグローバルリーダー育成を専門とした「ジーエルアカデミア」を設立。心理学に基づいた指導法が注目され、国内外の教育機関や企業、トップアスリートなど6000人に対して世界に通用する人材の育成・指導を行っている。著書は『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)など多数。新著「ヤバいモチベーション完全無欠のやる気を手にする科学的メソッド50」(価格:1,500円税抜/発行:SBクリエイティブ)発売中。

子どもの成長のために、良かれと思って言っていることが実はマイナスに働いていたり、「育てよう」と強く思うほど、「育たない」ことにつながる。そんな悩みをみなさんお持ちなのではないでしょうか? 『すぐやる人とやれない人の習慣』(シリーズ40万部突破)の著者であり、心理学に基づいた指導法で教育コンサルタント、メンタルトレーナー、心理カウンセラーとして活躍する塚本亮さんが、子どもの「心」を強くするための習慣ついて連載でお届けします。

文=塚本 亮

 

レジリエンス。これだけ時代の変化が早いVUCAの時代においては、この「心のしなやかさ」がますます求められるのではないでしょうか。

前回前々回とアメリカ心理学会が発表しているレジリエンスを鍛える10の方法のうち6つをご紹介してきました。

いつもお伝えしているように、これらを全て完璧にできればそれは理想的ではありますが、なかなかそうはいかないものです。私も子どもたちを接するときに意識はしていますが、まだまだ上手くできていないと反省することもしばしば。

しかし、少しずつでもいいので意識して取り組んでいくだけでも、子どもたちは、しなやかな心を築き、同様に私たち大人も心がしなやかになっていくのではないかと思うのです。

では早速ですが、残りの4つの方法を見ていきたいと思います。

一緒にチャレンジしていきましょう!

 

その7 自分で決断させる

これは昨今の教育の現場ではよく言われていることでもありますが、子どもの意思決定を尊重してあげることがレジリエンスを高めるためにも効果的だとされています。

 

スポーツは意思決定の連続ですよね。PKをどこに蹴る、パスかドリブルかの判断をする、誰にボールをパスする、味方にどんな声がけをする・・・・。周りからすると「なんでそんなことを」と思ってしまうことの連続でしょう。つい厳しいことを言ってしまいそうになるのも無理はありません。しかし、そこでグッとその気持ちを抑えて「子どもたちは意思決定の練習をしている」ということを意識しましょう。

 

だからといって指摘してはいけないということでもありません。子どもの意思決定は尊重する。その上で、「ここにパスを出していたらどうなっていたと思う?」と問いかけてあげることが重要です。

 

自分で意思決定することに、自信が持てない大人が増えてきています。特に男性に多いのだそうです。レストランで何を注文するか決められない。洋服も自分でどれがいいかを決められない。自分で意思決定をしては、周りに叱られるという意識ができ上がってしまうと、意思決定力はもちろんのこと、今回のテーマであるレジリエンスも向上しないのです。

 

もちろん日常生活でも、意思決定力を育むチャンスはいくらでもあります。「今夜は何を食べたい?」と尋ねて、「唐揚げ!」とか「オムライス!」とかのやりとりもいいですね。もちろん段取りやお財布と相談しながら無理のない範囲で問題ありません。このようなやり取りの連続が心のしなやかさを高めていくことにつながるのです。

 

その8 長期的な視点について話し合う

子どもに限らず大人もそうですが、失敗や悲しい出来事を日々たくさん経験します。そのときに目先の結果や出来事ばかりに意識を向けてしまうと、心のしなやかさが育ちづらくなってしまいます。

 

心理学の認知行動療法では「認知の偏り」と言われていますが、自分の欠点や失敗を過大に考え、自分のミスは厳しく評価してしまいます。このようなことを続けているうちは、自分に自信が持てません。

 

自分に厳しくなければ成長できないのでは? という声も聞こえてきそうです。確かにその通りだと思います。しかし、ここで大事なことは2点です。厳しすぎるハードルを課すと、やろうという意欲より、やらない理由を探すようになってしまうということ。短期的な視点でしか出来事を解釈できないと、長期的な視点が育たなくなってしまうのです。

 

だからこそ、子どもたちが失敗した時こそがチャンスなのです。ミスしたとしてもそこで人生が終わってしまうわけではなく、人生は続いていくのです。そこから何を学ぶと成長につながるかを一緒に考えましょう。

 

今失敗した、悲しい出来事が起きたという事実は変えられないかもしれませんが、そこから何を学ぶのか? というふうに考えることが習慣づくと、この先の困難も乗り越えることができるようになります。

 

その9 嬉しかった出来事を話し合う

ジャーナル・オブ・スクール・サイコロジー誌(2008年)に発表された221人の子どもを対象とする調査があります。子どもたちを2つのグループに分けました。グループ1は2週間、毎日感謝することを5つリストアップする。グループ2は毎日5つの困ったことをリストアップするように指示されました。

 

そのあとの調査では、グループ1の子どもたちは学校や勉強に対してポジティブな感情が高まり、生活に対する満足度も高まったことが示されました。

 

嬉しかったことに感謝する習慣を身につけることもレジリエンスを高める上では効果的です。

1日1つ嬉しかった出来事をテーマに取り上げて少しだけ話し合ってみてもいいでしょう。

 

これによって社会との繋がりを認識することにつながり、助け合って生きくことの大切さを感じることができるようになります。

 

中学生以上は簡単な感謝日記をつけてみることもいいですね。拙著『心の強化書』(ソシム)でも感謝日記については紹介していますが、読者の方から「前向きになれる」という声を多くいただいています。ぜひ試してみてくださいね。

 

その10 自己受容力を高める

思ってもいないことを言ったり、ひどい態度を取ってしまったり。素直になれない自分に、嫌気が差すことはありませんか? 

 

最後になりますが、レジリエンスを鍛える上で大事なことは自分を大切にするということです。心理学では自己受容と言いますが、ありのままの自分を受け入れるということですね。

 

自分の感情や気持ちを大切にすること、素直になることを考えてみてはどうでしょうか。

 

様々な研究からわかっているのが、幼いころに経験したことが自己受容力に影響を与えているということです。「なんでそんなことしたの!」「もっとこうしなさい、ああしなさい」と幼いころに大人からできるだけ自分を抑えるような教育を受けると、自分を受け入れるのではなく自分を抑えるチカラの方が育ってしまいやすくなるのですね。

 

では、これをどうすれば改善できるでしょうか。逆説的で申し訳ないのですが、とても大事なことは親や周りの大人が自分を受け入れるということです。自分を認めている人は他人(子ども)のことも認めることができます。自分を認めていない人は他人(子ども)のことを認められない傾向が強いものです。

 

大人だからといって弱い自分を否定したり、強いところやかっこいいところも見せようとしたりするのではなく、ありのままの自分を自分で受け入れていく。そうすることで子どもたちの自己受容力が自ずと高まっていきます。なかなか大きなテーマですが是非一度考えてみてくださいね。

 

 

ここまで「レジリエンスを鍛える10の方法」をお伝えしてきました。しばしば似た内容もあるなというのが私の見解ですが、まとめると大事な点は3つに集約できるのかもしれません。

 

まずは、子どもに介入しすぎないということ。2つ目は、視点を与えるということ。そして最後に親も一緒に成長していこうという姿勢を持つことです。

 

全ての土台になっているのは、これら3つなのではないかと思うのです。いかがでしょうか。

 

レジリエンスについては今回が最後になりますが、次回からは切り口を変えてお届けしたいと思います。

 

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

次回も宜しくお願い致します。

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