COLUMN

【強い心の育み方/塚本亮】
<第2回> VUCA(ブーカ)時代を生き抜く「レジリエンス」の高め方(前編)

PROFILE

つかもと・りょう
ジーエルアカデミア代表取締役、マッチャモーレ京都山城代表、同志社大学嘱託講師。高校時代、偏差値30台、退学寸前の問題児から一念発起し、同志社大学に現役合格。卒業後、ケンブリッジ大学大学院で心理学を学び修士課程修了。帰国後、京都にてグローバルリーダー育成を専門とした「ジーエルアカデミア」を設立。心理学に基づいた指導法が注目され、国内外の教育機関や企業、トップアスリートなど6000人に対して世界に通用する人材の育成・指導を行っている。著書は『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)など多数。新著「ヤバいモチベーション完全無欠のやる気を手にする科学的メソッド50」(価格:1,500円税抜/発行:SBクリエイティブ)発売中。

子どもの成長のために、良かれと思って言っていることが実はマイナスに働いていたり、「育てよう」と強く思うほど、「育たない」ことにつながる。そんな悩みをみなさんお持ちなのではないでしょうか? 『すぐやる人とやれない人の習慣』(シリーズ40万部突破)の著者であり、心理学に基づいた指導法で教育コンサルタント、メンタルトレーナー、心理カウンセラーとして活躍する塚本亮さんが、子どもの「心」を強くするための習慣ついて連載でお届けします。

文=塚本 亮

 

複雑さを増す時代に必要なチカラとは?

VUCA(ブーカ)という言葉を聞いたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

現代は、テクノロジーの進化によって、あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な状況にあることから、「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれています。

VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語です。

テクノロジーだけでなく、2020年はコロナの流行によって何が起こってもおかしくない時代を生きていることを、まさに目の当たりにした1年だったのではないでしょうか。

これまでの常識が非常識になり、またその逆も起こりうる現代社会を生きて、強いストレスに悩む人も多い現代でもあります。

そんなVUCAの時代に、子どもたちが力強く生きていくために必要な力の1つが「レジリエンス」です。そしてスポーツはこのレジリエンスを高めるのに、とても大きな影響力を持ちます。それでは今回はレジリエンスについてご紹介したいと思います。

 

レジリエンスはメンタルの強さに直結する

テレビやインターネットなどで、「レジリエンス」という言葉を見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか? 最近、話題になっている心理学用語ですね。

英語では”resilience”と書き、困難な状況や苦境からの復元力、回復力を指します。

ストレスや失敗・困難な状況に直面した時に、くじけてしまったり成長が止まってしまわないように、そこから問題点を見つけ出して解決・成長へ持っていけるという能力が重要視されているからです。

レジリエンスが高い人は、逆境や困難な状況に置かれた時にでも早く立ち直ることができる心理的な弾力性があります。一方でレジリエンスが低い人は傷つきやすく、なかなか立ち直れません。

同じ状況に置かれても、その後の立ち直り方は本当に人それぞれ。いったんは落ち込んでも、その後、5分で回復する人もいれば、次の日まで引きずってしまう人もいます。そのような個人差はなぜ生まれるのでしょうか?

もちろんレジリエンスを高めることで、この先困難な状況や苦境から逃れて生きていけるわけではありません。ただ、そのような状況に追い込まれた時に、自分でその状況を打開するしなやかさを身につけておくことでストレスや不安、悲しみを上手に乗り越えることができるようになります。

 

レジリエンスを強化する10の方法

ではレジリエンスを強化するために何ができるのでしょうか。レジリエンスを強めるにはコツがあります。アメリカ心理学会(American Psychological Association)が推奨している子ども向けの「レジリエンス強化の10のコツ」がありますので、今日から3回に渡ってご紹介したいと思います。ぜひ、子どもたちのレジリエンス強化にお役立ていただけると嬉しいです。

 

その1 絆を強める

絆を強めるというと漠然とした印象を持ってしまうかもしれません。ここでの絆というのは、友達や親子間の関係のことです。友達との関係をうまく築く方法を伝えること。共感する力や傾聴するスキルの大切さを伝えることです。サッカーなどのチームスポーツにおいては、チームメイトとのコミュニケーションを学ぶチャンスがたくさんあります。味方のチームメイトが試合中に大きなミスをした時に「何やってんだよ」「なんでそこにパス出したんだよ」と言うのではなく、チームメイトに寄り添う声がけができるように働きかけることは大切なことです。

子どもは競争が好きで、もちろん相手に勝ちたいと言う気持ちを強く持っています。ですから、私も子どもたちがついきつい言葉を味方に投げかけてしまうシーンをよく目にします。その時に親も子どもに対してきつい言葉で注意するのではなく、子どもがどのような気持ちでその言葉を使ったのかを聞くようにしましょう。頭ごなしに注意しても「どうせ自分の気持ちなんてわかってくれない」と感じてしまうだけです。

そして、「どのようにしたら次はうまくやってくれるだろう?」、「チームとして良い結果を出せるだろうか?」と子どもたちにぜひ質問してあげてください。

子どもたちが大人になった時、仕事も家庭もチームワークですから、もちろんうまくいかないことをたくさん経験することでしょう。その時に「相手はどういう気持ちでこうしたのか」、「どうしたらチームとしてより良い結果を出すことができるか」を考えるチカラがあれば、課題や困難を乗り越えることに繋がります。

「共感」と「傾聴」をぜひ子どものレジリエンスを高める2つのキーワードとして考えてください。

 

その2 困難な時こそ周りを助ける

努力してもうまくいかない時、試合に負けてしまった時、大きな失敗をしてしまった時、スポーツを頑張る子どもたちは自分のことを「無力だ」と感じてしまうことがあります。

しかし、落ち込んでいる時こそ、人助けをすることで無力感から解放されることがあり、レジリエンスを鍛えるチャンスでもあります。

ここでのキーワードは「小さな成功体験」と「貢献感」です。

オーストリア人心理学者アルフレッド・アドラーは自分自身の幸福を高めるのに最も貢献するのが「共同体感覚」と表現しましたが、平たく言うと「他者と結びついている」という感覚のことです。ですから、落ち込んでいる時こそ誰かの役に立つ行動をすることで、「貢献感」を感じることができ、その状態からのリカバリーがしやすくなります。

子どもが落ち込んでいる時、親や周りの大人はその子が人助けをできる機会を作り出してあげましょう。家庭でのお手伝いでもいいですし、ちょっとしたお遣いでもいいでしょう。ここでのポイントはあまり褒めすぎないことです。褒められるためにやるということが繰り返されると「貢献感」を感じることができにくくなってしまうからです。

うまくいかない時こそ、誰かに貢献することで「貢献感」を感じ、自分のメンタルのコントロールもできる経験を繰り返していくことで、辛い時や悲しい時を乗り越えるしなやかさが身についていきます。

 

その3 1日5分の日課を作ろう

アリストテレスは
“人は繰り返し行うことの集大成である”
と言いました。

「日々の日課を守りましょう」というのは当たり前すぎるように感じるかもしれませんが、レジリエンスを高めるのに効果的だと言われています。

ただ大人になってもダイエットや勉強など、何かを日課にすることは簡単なことではありません。

イチローさんは、高校時代に寝る前に10分間の素振りを毎日休まずに3年間続けたそうです。

ですから1日5分以内でできる、何か新しい日課を一緒に作ってはどうでしょうか。

あることを習慣化したり日課にするまでのプロセスにおいて大切なことは、大きな日課を作ろうとしないことです。例えば、毎日1時間勉強するとか、毎日30分「OOの練習する」などといったようなことを掲げない方が良いでしょう。

なぜなら、行動のハードルをできる限り下げることが習慣化に大切だからです。もちろん毎日毎日30分や1時間何かを続けることができるに越したことはありませんが、日々いろんなことが起こります。体調が悪い日もあれば、気持ちが乗らない時もあります。

そのような時に実行できそうにないことを掲げてしまうと「できなかった」という失敗体験が、継続することに対しての意欲の低下に繋がってしまいます。

イチローさんも毎日10分とは言いましたが、もっとできる日は30分や1時間、いやそれ以上練習したに違いありません。

まずは1回5分以内でできることを、毎日継続する目標を子ども一緒に立ててみればどうでしょうか。

例えば、海外のサッカーチームや選手が好きで、将来海外でサッカーをしたいという夢があるならば、1日5分語学の勉強することを日課にしてもいいでしょう。習慣化できるように親が手伝ってあげることが大事です。習慣化についてはまた別の折に触れたいと思いますが、ぜひ何か1つ新しい日課を作ってみてください。たとえどんなに小さなことでも、続けられたことが自信にも繋がるからです。

続きはまた来月に!
読んでいただいてありがとうございます。

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