COLUMN

【アスリート育成に倣う 「新時代のチームビルディング」 坂井伸一郎 ♯01】
村井チェアマンの示唆を受けたビジネスとスポ―ツの相関関係
―後編―

アスリートの競技成果を向上させる座学プログラムを、ビジネスなどあらゆる分野の人材育成メソッドに体系化した「スティッキー・ラーニング」を開発した坂井伸一郎氏。「絞って伝えて、反復させること」をポイントに、多業種のビジネスパーソンを「戦力」に変えてきた人材育成のプロが、時代の変化に適応するチームビルディングの在り方について、連載でお届けしていく。

 

#01 前編はコチラ >

 

アスリート“大成”に因果関係が確認できたチカラ

 

 もうひとつの印象に残ったことは「アスリート評価指標としての心・技・体のどの要素もサッカー選手が競技者として“大成”することとの間に因果関係が見出せなかったが、パーソナリティ評価指標としての『主張する力』と『傾聴する力』にのみ“大成”との因果関係が確認できた」というお話です。これは非常に興味深いです。チャンスがあれば詳細なデータを拝見してみたいです。私から村井さんにはお願いすることできませんので、SPODUCATIONさんがそういう企画を作ってくれたら嬉しいんですけどね。
 アスリートの“大成”というのは最終的な大成功みたいなイメージで私は捉えました。定義となると難しいのであえてイメージとしておきます。とはいえ一定数のサンプルとなった選手がいたのでしょうから「10年に一人の逸材」といった稀有さではなく、各国で各世代のトップクラスの選手として時代を牽引しながら平均年数をそれなりに大きく超えて選手生活を維持することができたような選手なのではないでしょうか。そういった“大成”を果たした選手にはその競技特有の技術やフィジカルとの相関は見られず、むしろパーソナリティ(人間的性質)に相関があるというのは私自身納得感があります。この話のさらに興味深いポイントは、Jリーグチェアマンの村井さんが「成長の速度」や「一時的な活躍」ではなく“大成”を選手の真の幸福と捉えていて、少しでも多くの選手にそこへとたどり着いてほしいという願いと共にそのために何が必要なのかを真剣に探しているということですよね。

 

スポーツを愛するビジネスパーソンは、知識をスポーツに還元していく使命がある

 

 こういう視座を備えている人が組織のトップにいるって本当にすごいことだと思うし、ビジネスサイドから招かれたトップだからこそ持ちうる視座であり粘り強さだと思うんです。だって普通に考えたら、“J 1所属になった選手の共通点”や“日本代表になった選手の共通点”探しくらいまでしか予算をかけて行わないと思うんですよ。でも村井さんはそれを飛び越えて選手の“大成”のキーファクター探しにトライされた。

 この話を聞いて村井さんが尋常ならざる人だって思えて震えました。私たちのようにスポーツに育まれ、スポーツを愛するビジネスパーソンは、スポーツに迎合したり擦り寄ったりするのではなくって、ビジネスを通じて知り、気づき、身につけたものをスポーツに還元していく使命があると思うんです。そのことを改めて教えてもらった村井さんのこのお話でした。

 さて、長々と思うがままに書かせていただきましたがそろそろ結びとさせていただきます。人を扱う学問や理論には絶対的な正解はないものだし、またベターと思われて重宝されていたものも時代や環境変化によって容易に変わってしまいます。「チームビルディング」もそういうものでしょう。まさに人の価値観や心情、人と人との関係の在り方や社会常識と呼ばれるものに大きく影響を受けるものですし、コロナ禍で何もかもがガランゴロンと音を立てて変化している今、チームの常識や処方箋も当然変わっていきます。

 今後も私は「チームビルディングに対しての累積思考量が誰よりも多い」人であり続けられるよう、このテーマについて学び、考え、伝え続けていきますので、ぜひ「自分もそういうのに興味あるよ」という方はお気軽にご連絡ください。一緒にチームビルディングの今の時代にフィットした姿を模索していきましょう。

 

―♯02に続く―

 

PROFILE

坂井伸一郎(さかい しんいちろう) | 株式会社ホープス 代表取締役
成蹊大学卒業後、株式会社高島屋に入社して13年間在職。販売スタッフ教育や販売スタッフ教育制度設計も担当した。ベンチャー企業役員を経て、2011年に独立起業。現在は教育研修会社の代表を務めつつ、自ら講師として年間50本・2500名(業界の偏りはなく、製造業・サービス業・金融業・病院・学校法人など多岐にわたる)の研修を行なっている。社会人研修の他に、プロスポーツ選手やトップアスリートに向けた座学研修の講師経験も豊富(年間のアスリート座学指導実績1000名超は、国内屈指の実績)。講師としての専門領域は、目標設定・チームビルディングなど。座学慣れしていないアスリートへの指導経験が豊富ゆえに、「わかりやすく伝える」「印象に留めるように工夫する」という指導法を用いる。この指導教育メソッドを体系化した「スティッキー・ラーニング」は、アスリートのみならず、一般ビジネスパーソンにおいても、組織全体の人材レベルアップを図れると高く評価されている。
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