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廣瀬俊朗│「人生を表現する一つの手段がスポーツ。大事だけどそれが全てじゃない」

元ラグビー日本代表監督エディー・ジョーンズから「ラグビー界でナンバーワンのキャプテン」と言わしめ、高校、大学、東芝、日本代表のすべてで主将を経験した廣瀬氏。引退後もドラマ、ニュース番組の出演の他、ラグビーはもちろん他競技のスポーツ普及活動にも積極的に参加し多方面で活躍中だ。そんな廣瀬氏にとってスポーツとは「一つの手段」という。その言葉の真意とは?(※2020年6月に収録)

与えられた環境の中で何をするのか。制約の中でこそ生まれるものがある。

──2019年はラグビーW杯で日本中が沸きましたね。

「W杯が日本で開催されること自体が信じられないことでした。それから、あれだけ日本中が沸き、史上初のベスト8進出も実現しました。もちろん、ゴールはまだ上にありますが感無量でしたね」

 

──ドラマ「ノーサイド・ゲーム」のご出演など、去年は忙しかったのでは?

「自ら売り込んで出演したわけではないんですよ。ラグビーのシーンだけ撮って編集してもらうつもりが、セリフもどんどん増えて、『あれ? とんでもないことになってるな』って(笑)。結果的にドラマを見て、ラグビーを知ってくれた方も多くいらっしゃったみたいですし、嬉しかったです。現役を引退し、どんな形であってもラグビーに貢献したいと考えていていたので、昨年はその役割を果たせたと自負しています」

 

──「#ラグビーを止めるな2020」(コロナ禍による進路支援を目的としたインターネット活動)にも積極的に参加されていますね。

「インターハイや全中(全国中学校体育大会)など大会中止が相次いでいます。中学生、高校生は1年間をこの大会のために練習してきています。彼らは自分たちで何かをできるわけではないので、そこは大人が率先してやらなくてはいけないです。それがラグビーだけに止まらないように、『#スポーツを止めるな2020』として、バスケ、バレーと横展開を続けているところです」

 

──影響力のある方が動くことで反響もより大きくなると思います。また、コロナ禍の影響により、ずっと家にいることでモチベーション低下の懸念も広がっています。

「普段通りを求めなくてもいいと思いますよ。この環境の中で一生懸命やれたのかを毎日振り返ることが重要です。そこが大事なポイントかな。頑張ったんやったらそれでいいし、できなかったら、明日をどうするのか。それだけでも成長できるはずです。それこそ、コロナがなければこんなオンラインイベントもできなかったわけです。制約の中で生まれることって絶対あるんですよ」

 

──プラス思考が大事だと。

「メンタル的にも大事なことです。例えば人間は好きなことを考えるだけで、気分がよくなるらしいです。脳が好きなことを考えると機嫌がよくなるんですよ。あとは一生懸命やってきたこと、これからやりたいこと、感謝の気持ちを5つくらい出してみるだけで、自分の機嫌って変わるらしいです。しゃべっていて文句が多い時は『ちょっと待てよ』と。『朝ごはんがあることに感謝』でもなんでもいいんです。それにコントロールできることと、できないことがあるじゃないですか。コロナで家にいなあかんことは、僕らでコントロールできることではない。それに対して何をするのか、発想を変えることが大事ということです」

 

コミュニケーションはあくまで手段という考え方。子どもの成長に対して、相対的な基準と絶対的な基準があるべき

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──「スポーツを続ける」というテーマでお話を聞かせてください。日本では小、中、高の節目のタイミングでスポーツを辞めてしまう子がいます。子どもが辞めたいと言った時、親はどうサポートすべきと思いますか?

「辞めたい状況は人それぞれです。僕はむしろ、どうしてその発想に至ったのかを聞いてみたい。もしかしたら無理強いして、やらせるものではないかもしれない。他に好きなことが見つかったのならそれでいい。甘えや逃げだったら、僕はちゃんと言いたいことがあります。その辺りはちゃんと見抜きたい、というか問いかけたいです。ウチはまだ子どもが小学3年生と1年生なので、中学、高校になると分かりませんが、最後は自分で決断してほしいですね」

 

──スポーツを続けることでコミュニケーション能力を養うことができると思います。だた、個人差があって入り口の部分でも得意、不得意がある。親は心配なポイントです。

「でも、言葉が少なくても意思疎通ができている選手はいますよ。必ずしもコミュニケーション能力が高いとか、口数だけで判断しなくてもいいのではないでしょうか。あとは普段、よりいい人間関係が築かれると、しゃべりやすくもなると思います。どっちが先なのは分かりませんが、友達になることが大事なのであって、コミュニケーションはあくまで手段なんじゃないかなと。自分の母親は僕の言うことに『そんな考え方もあるんや』っていつも肯定的に接してくれたおかげで、意見を言うのが怖くなくなりました。『言ったらまたなんか言われるんちゃうか』ってなると、気持ちも段々と弱くなってしまいます」

 

──自分の息子にも気をつけようと思っちゃいました(笑)。

「アッハッハ、焦っていたり、親も失敗するもんなんですよ(笑)。その時はごめんなって早めに言います。親だから偉いわけじゃない。そこの関係はフラットでいいんです。ただ、子どもはやっちゃいかんこともやるから、そこは叱らないといけないですね」

 

──なるほど。大人が「コミュニケーションはこうすべきだ」と強要し、それがハマらないと不安になる。子どもなりの意思疎通があることを、理解してあげることが大事なのかもしれませんね。

「あとは子どもにとって、気持ちは一歩寄り添っていても、結果的に声を出せなかったことだってあるでしょう。そんな時は『もうちょっとやん!』って、こんな感じがいいです。『なんで今日もしゃべらなかったの! 約束したじゃん』って言うと萎縮してしまいますよ」

 

──大人の物差しで計っちゃダメということですね。

「あと親は『あの子はできてるじゃん』ってなりがちです。なんで私の子どもはダメなんだと疑心暗鬼になる。ある程度は比べる必要もあるけど、子ども自身が成長していることに対して、相対的な基準と絶対的な基準があるべきです。と言う僕も日々失敗して反省しています(笑)。親子が一緒になって取り組むことがポイントかもしれません」

 

日本ではスポーツが人生の全てになりすぎている。人生はもっと大きい

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──広瀬さんがラグビーを通じて学んだことは?

「仲間を大事にすることを学べたと思います。ラグビーはいろんな体型の人がいて、自分だけ好き放題やって勝てるスポーツではありません。仲間がどんな気持ちでやっているかを考えるきっかけにもなりました。ルールがある中で、どう工夫して勝っていくか。規律、ルールもスポーツから学んだと思います。規律を破る人間は上には行けないことも知りました」

 

──トップレベルでやってられた要因は?

「なんでしょうね。より厳しい世界にいることのプレッシャー、修羅場は多いと思います。そこで大事なのは自分らしさと、チームとしての軸。そこが磨かれているかが大事なポイントだと思っています。自分を知っていることが、トップでやり続けるには重要なのかもしれません」

 

──現役を引退されて次のキャリアに進む時、トップでやって来られたスポーツ選手の方は悩み、迷われると聞きます。広瀬さんはどうやってスイッチを切り替えたのですか?

「引退したスポーツ選手が苦労しているのは、日本ではスポーツが人生の全てになりすぎているからじゃないかと思います」

 

──スポーツが人生の全てなりすぎている……。

「そういう人がスポーツを辞めたときに、次のキャリアでどうしていいかが分からない。海外のトップアスリートは、スポーツより人生の方が割合が大きいんですよ。家族があって、他にやりたいことがたくさんある。将来を上手に設計しているんです。だから、これ(スポーツ)だけにならない。彼らにとっては、人生を表現する一つの手段がスポーツ。だからアスリートじゃなくなっても、違った立場からその素晴らしさを伝える方法を考えるんです。例えばこのSPODUCATIONのイベントに出ることで伝えられることもあるし、スポーツが広まるきっかけはたくさんあります。そういう軸をちゃんと持てるかが大事なのではないでしょうか。スポーツは大事だけど全てじゃない」

 

目的の意味を理解することで、仲間のために頑張れる

──広瀬さんは子どもの頃からスポーツと勉強を両立されていたのですか?

「正直、中2くらいまでは意識してなかったですね。伝統あるラグビー部にひかれ(大阪府立)北野高校に行きたいと強く思ってから、塾に行かせてもらうようになりました。北野高校は進学校のイメージが強いですが、ラグビー部はもちろん、文武両道を実践している高校で、志望している中学生の仲間がいたことも大きかったですね。入学した後の目標や、何を楽しみたいかが明確になると僕はチカラが出ますね」

 

──目標ができると人は頑張れますよね。

「目標と目的という話をよくします。スポーツをやっていたら『勝ちたい』意欲が湧いてきますが、そもそもなぜ勝ちたいのでしょうか。例えば、勝ってみんなで喜びたいから、としましょう。ではその喜びを分かち合うのは、試合に出ている仲間とだけでいいのでしょうか。違いますよね? 応援してくれたお父さん、お母さん、コーチもそうです。そうしてチームとして目的が明確になると、周囲の人との接し方も変わってくるんです。ただ『勝ちたい』だけだと、周囲でサポートしてくれている人に目がいかなくなってしまいます。あと、勝ち負けは自分ではコントロールできないことです。勝ちだけを追い求めると、負けが決まったときにチームがバラバラになってしまいます。仲間のために頑張れると、負けても最後まで諦めない、いいチームになります。それが周囲からも応援したいチームになるんです」

 

──ラグビーW杯の日本代表がまさにそんなチームだったのではないでしょうか。それに目標だけで終わらないことが大事ですよね? 人生はそこで終わりじゃない。

「2012年から2015年、ラグビー日本代表を憧れの存在にしたいと思っていました。そのために勝とうと。その目標は僕の人生でまだまだ続いています。目標ってなくならないんですよ。選手として勝って成し遂げることは終わったので、別の形でできること、それが昨年のドラマ『ノーサイド・ゲーム』でした。正直、全然知らん世界でしたしイヤでしたよ(笑)。演技をやったことがない人間が、演技しに行くんですから。ただ、下手なのはしょうがないので、セリフだけは絶対に覚えていこうと決めていました。電車の中で1人でブツブツ台本を読んでいましたよ(笑)。そしたら周りの目も対応も徐々に変わっていったんですよね。引退しても『ノーサイド・ゲーム』でラグビーの素晴らしさを表現できたことはすごく幸せなことだと思っています」

日本代表を引退後も、ドラマや関連イベントにてラグビーW杯日本開催の認知を広げるために尽力した。

──最後にメッセージをお願いします。

「みなさんが積極的にチャットとかでコメントをいただいて、安心してイベントができました。みなさんもコロナで大変な状況は続きますが、ちょっと深呼吸してリラックスしてみましょう。自分がしんどい時は、相手もしんどいです。いつかコロナが収束しスポーツが復活したら、その喜びは大きくなるはずです。その日のために、できることを少しづつ積み重ねていければいいと思います。本日はありがとうございました」

 

PROFILE

廣瀬俊朗
1981年10月17日生まれ、大阪府出身。2004年、東芝ブレイブルーパスに入部し、キャプテンとして日本一を達成。日本代表として28試合に出場し、キャプテンも務めた。現在は(株)HiRAKU代表取締役としてスポーツ普及、教育、健康、食を中心に活動。

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