組織の中で活動していくビジネスパーソンやアスリートの多くは、人間関係などの外的な心の乱れに悩みを抱えているのではないだろうか。困難な状況下でもどう心を整えていけるかが、ビジネスやスポーツ成功の鍵を握っている。そこで今回は、応用スポーツ心理学のプロフェッショナルであるスポーツドクターの辻秀一氏、元日本代表DFにしてFC東京のキャプテンを務めた森重真人選手に、組織を成功に導く心の整え方について語ってもらった。(※2021年5月に収録)
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心の乱れないチームづくりには、互いに伝え合うことが必要不可欠
――辻先生は、bizFestaにて体操の田中理恵さんと「個人スポーツでの心の整え方」について対談していただきました。今回は、「組織スポーツでの心の整え方」について森重選手と対談いただきたいと思います。さっそく本題ですが、辻先生は心の整え方を日々色々なアスリートの方へ伝えられていますよね。個人スポーツと組織スポーツでは、心の整え方は違うものなのでしょうか?
辻 基本的なところでは、同じですね。心の状態に影響する外的要因は、「環境」「出来事」「他人」という3大要素。「他人」は個人スポーツと組織スポーツで違うようにも見えますが、セルフマネジメントの観点では結局同じことです。組織スポーツでいうチームメイトも、個人スポーツでいう監督やコーチも、自分の外部にいる存在という意味で変わりません。ただ「他人」以外の要素で言えば、組織スポーツならではの配慮すべき要因も存在すると思います。その辺りは、森重選手に色々聞いてみたいところです。
森重 個人スポーツの方は、すごいなと思います。自分一人でやっていかないといけなくて、結果が良くなかったとしても誰のせいにもできない。たとえばサッカーの場合は、自分の調子が良くてもチームメイトのミスで失点して負けてしまうこともあるので、悪い結果を他人のせいにしやすい面もあります。でも、そうなった時に最終的に考えることは、周りがどうこうよりも自分自身。その試合で自分ができたこと、次の試合でやるべきことを明確にして、一試合一試合セルフマネジメントしていく。そういう意味では、根本的なところは確かに同じなのかなと思います。
辻 森重選手の心が揺らいだり囚われたりする場面は、どんな時ですか?
森重 僕は、キャプテンを務める以前は、多少周りがミスしても「自分さえ良ければ」というプレーでした。でもキャプテンという立場では、チームメイトのことやチーム全体の状態を考えて立ち振る舞っていかないといけません。今まで100%自分だったものが、何割かはチームのことを考えないといけなくて。それで、逆にチームのことを考えすぎて自分のことがおろそかになってしまうこともあって、また自分の割合を上げてみたり。どちらかが上手く行けば一方が上手く行かなくて、バランスが難しいなと感じました。状況によって柔軟に対応していく必要がありますね。
辻 明確な正解はきっとないでしょうから、難しいところですね。審判やメディアのような他人に対して、心が揺らいだり、囚われたりすることはありますか?
森重 ここ数年で変わったなと思うところが、レフェリング(審判)に対しての意識です。人間なのでどうしてもミスジャッジはあります。明らかに間違いなのにファールとして取られたときに、「こちらは真剣にやっているのに、どうして間違えるんだ」と怒りがこみ上げてしまうこともあって。でも、「それもサッカーの一部」と考えるようにしたら怒りをコントロールできるようになって、ストレスなく試合に臨めるようになりましたね。30歳を超えて、やっとできるようになってきました(笑)。
辻 何かきっかけはあったのですか? 怒ったまま、試合を台無しにしてしまったとか。
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