ビジネスの戦略決定や市場分析のほか、政治など多分野で応用される「ゲーム理論」を専門に、アメリカの名門大学で教鞭をとる鎌田雄一郎氏。社会において複数の人や組織が意思決定を行う場合に、どのような行動が取られるかを予測する「ゲーム理論」のスペシャリストは、トップアスリートの思考をどう解析するのだろうか。「bizFESTA」にて、 WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太選手と対談した鎌田氏。若き天才ゲーム理論家が、たった一度の対談を基に<王者の意思決定>に至るメカニズムを複合的な視点でひもといていく。
4月16日-18日に開催されたSPODUCATIONのイベント「bizFESTA」にて、プロボクサーで現WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太選手と対談をした。初回の記事では、私の専門であるゲーム理論について説明しながら、この対談を概観した 。
第2稿からの数回は、対談内容の細かいところを振り返りつつ、私なりの気づき を加えていっている。本稿は、その第4弾だ。
対談を振り返ると言っても、対談内容の全ては書ききれないし、私の筆力で村田選手の発言のニュアンスを正確に伝えきれているとは限らない。なので、この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ見逃し配信をご覧いただきたい。
ビジネスでも日常でも必要な、「結果を客観視する」スキル
「結果を客観視する」ことについて考えよう。
あなたが仕事で、あるプロジェクトに関わったとする。自分はどのような貢献ができたか、結果が出たのは、もしくは思うような結果が出なかったのは、なぜなのか。これを自分目線だけで理解するのではなく、他人の目線──たとえば、他のプロジェクトメンバーの目線、取引先の目線、顧客の目線──からも理解しようとすること。そういった人たちの目に自分の働きがどのように映っているかを理解することは、結果を次につなげ、自分を成長させる上で欠かせないだろう。
思えば「結果を客観視する」ことは、何もビジネスシーンに限らず、日常生活の様々な場面で必要なスキルだ。だからこれは、小学校でも教わる。
たとえば二人の子──太郎くんと花子ちゃんとしよう──が喧嘩をしたとする。結局花子ちゃんが泣くことになった。すると先生は太郎くんに、「花子ちゃんの気持ちになって、考えてみてね。それに、健太くんが太郎くんのしたようなことを花子ちゃんにしていたら、どう思う?」と言うかもしれない。これは、「なぜ花子ちゃんが泣くという結果が生まれたのか、あなた目線の解釈だけではなく、客観的に考えてみなさい」ということである。
こんな小学校でも習うようなことが、大人になってもできないのだから、人というのは不思議である。でも結局、こういったある意味基本的なことができるかできないか、それが様々な局面での成功失敗を分けているようにも思われる。
だとしたら、気になるのは以下のことだ。「結果の客観視をするための、うまい方法はあるのだろうか?」
対談では、勝負のプロである村田選手に、この問いについての考えを学べた。
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