【スポーツ成長法則 vol.4】 〈後編〉脱・常識が強さの根源。理不尽なスポーツの世界で育つ「折れない力」/宮田 誠

PROFILE

みやた・まこと

株式会社ユーフォリア代表取締役。
長野県出身で白馬村在住の親族3名に冬季五輪選手がいる環境で育ち、大学生までスノーボードの選手としてプロライダーを目指す。明治大学商学部科卒業後、エネルギー関連の商社、株式会社ブリヂストンでグローバルに活躍。ブリヂストン退職後、白馬村を中心に各地のスポーツ大会の主催・運営、スポーツマーケティング/コンサルティング事業を手がける。2008年に橋口 寛氏とともに株式会社ユーフォリアを創業。

スポーツは健康などフィジカルな面だけでなく、自己肯定感、論理思考、やりぬくチカラなど人生を生き抜く力に結びつく。しかし、その結びつきを解像度高く語れる人は少ない。そこで、幅広い分野で活躍するビジネスパーソンに、スポーツが持つ「人を育むチカラ」について聞いていく「スポーツ成長法則」。第4回目は、株式会社ユーフォリア代表取締役宮田 誠(みやた・まこと)さんです。

文=鶴岡優子(@tsuruoka_yuko

活況のスポーツテック業界でひときわ注目を集めているのが株式会社ユーフォリアだ。スポーツ選手のコンディション管理、ケガ予防、ピーキングのためのSaaS型データ管理ソフト「ONE TAP SPORTS(ワンタップスポーツ)」をラグビー日本代表、プロ野球、Jリーグ、Bリーグなどに提供し急成長しているベンチャーだ。「スポーツの力を活かし、スポーツの力を通じて、未来をつくる」をミッションに掲げるユーフォリアの共同創業者 宮田誠さんに「スポーツの力」を聞く、インタビュー後編です。

 

「僕が動くかどうかで未来が変わる」創業の道へ

台湾での失敗を経て、20代後半からの宮田さんは必死で勉強するようになった。本を読みあさり、ビジネススクールにも通った。グローバルで闘う日本企業でマーケティングを実践で学ぼうとブリヂストンに転職した。ブリヂストンでは高い業績を出し、最年少管理職へのステップを提案されたという。しかし、宮田さんはその申し出を断ってしまう。

「このまま進むと現状に甘えてしまう。ヤバイと思ったんです」

決意してから2週間でブリヂストンを退職し、ファイナンスの勉強会で知り合った橋口 寛さんとユーフォリアを創業する。橋口さんは外資系コンサルティングファーム、企業のターンアラウンドを行ってきた経営のプロだ。プライベートエクイティファンドなどでファイナンスの経験も深い。プライベートではスポーツ観戦が大好きで、特にラグビー、野球に対しての思いは熱い。スタジアムについて造詣が深く、スポーツ専門誌を端から端まで熱心に読み込むほどのスポーツマニアだ。経営のプロでスポーツマニアの橋口さんと、マーケティングのプロでトップアスリートの気持ちがわかる宮田さん。最強のコンビが結成され、2008年に「多幸感」を意味するユーフォリアを設立した。

「安定した大企業を辞め、30代で起業することに迷いはなかった」と宮田さんは話す。創業を決意する大きなきっかけとなったのが、自ら発起人となった白馬国際トレイルランだった。スポーツという形は方法論で、地元の魅力をマーケティングで伝える地方創生の活動だった。当時スキー客が激減していた白馬村が、夏のトレイルランをきっかけにインバウンドブームも重なって冬の観光客が増加し、通年でにぎわう観光地へと息を吹き返していった。

ブリヂストンでは大きな予算を動かしてマーケティングの仕事をしていたが、トレイルランの活動で再び白馬村に通うようになり、あることに気づいたという。それは大企業であれば自分の替わりはいても、目の前で困っている人を助けることができるのは自分しかいない、ということだった。動くお金は小さくても「僕が動くかどうかで未来が変わる」場所で働きたい、と思ってのキャリアチェンジだった。

かつてはスノーボードでプロを目指した宮田さん。探究、研究で答えのないものを探すことができる力はスポーツから培われたと言う。

 

ラグビー日本代表とともに闘う「ONE TAP SPORTS」

ユーフォリア創業から数年経った頃、親友から宮田さん宛に一本の電話がかかる。「今すぐ、ラグビー協会に来い」と。エディ・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が就任した2012年、2019年ラグビーワールドカップ(W杯)日本開催に向けてラグビー日本代表の変革が始まっていた。怪我が多いラグビーにとっては、選手のコンディション管理やフィジカルデータの管理は重要なミッションだ。それを可視化するツールを開発するパートナーを探していたのだ。

「ラグビーやサッカーなど、団体競技は多くの選手のコンディションをまとめて管理するのが難しい。個人競技は練習ノートに記録している人はいるが、それも一部のトップアスリートだけ。選手がどのくらい疲労しているか正確に把握できないまま、試合に起用してしまうこともある。選手のコンディション、練習の記録、食事管理などを可視化することで、選手の疲労や状況を把握しピークに合わせられる可能性が高まる。怪我を減らすことにも繋がるんです」

2013年、ユーフォリアが作ったONE TAP SPORTSがラグビー日本代表に採用された。2015年ラグビーW杯で日本代表は劇的な勝利を収めたことで、ONE TAP SPORTSに徐々に注目が集まるようになる。2017年頃からスポーツにおけるデータ管理がトレンドになってきたこともあり、現在サッカー、バレー、バスケットボールなど71競技、1700以上のチームに導入されるまでになった。プロ野球、Jリーグ、BリーグなどプロスポーツにONE TAP SPORTSが導入されたことで、部活動でも導入する学校が増えている。

コロナで選手の体調を遠隔管理したり、体調管理を記録するのは喫緊の課題となったことも影響し、ONE TAP SPORTSのユーザー数は急増している。偶然にもコロナが体調管理をすることの重要性に気づかせてくれて、アスリートに限らず一般企業でも社員の体調管理は重要課題になった。ユーフォリアでは社員の体調管理もONE TAP SPORTSを活用している。

「この先、企業や学校などスポーツ以外の場面でもコンディション管理が当たり前に継続されるようになる。ただ記録するだけではなく、そこからどう行動を変容させるかが重要です」

スマホやタブレットで簡単に体調管理を可能とした「ONE TAP SPORTS」。71競技、1700以上のチームで導入されている。

 

選手としての経験は豊富でも特別扱いしない。脱・常識で成果を出せるか

ONE TAP SPORTSの拡大に伴い、ユーフォリアではスポーツ界と共通言語で会話できる元アスリートが活躍している。しかし、採用においては元アスリートを特別扱いはしないという。

「ビジネスの世界でも理不尽が多いけれど、スポーツは世の中の理不尽さが凝縮されている世界。がんばったのに相手が強い、天候が悪い、怪我していたからと、いくらでも他責することができてしまう。一流のトップアスリートになれる確率は宝くじに当たるよりも難しい。それでも一流になれる人は努力、運だけでなく、たとえ常識はずれでも自分のやり方を工夫し、折れずに成し遂げる人が多い」

ユーフォリアはベンチャー企業だ。ベンチャーでは、一般的には考えつかない常識の外でアウトプットを出せる人が活躍する舞台である。非常識を常識に変える力がある人が上に行けるのは、スポーツとベンチャーの共通点。理不尽さに屈せず、脱・常識で挑戦する人が集まるユーフォリアの今後の成長に期待したい。

 

 

株式会社ユーフォリア代表取締役 宮田 誠さんが考える
スポーツが持つ「人を育むチカラ」とはー
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”努力が必ずしも報われない理不尽さが凝縮しているのがスポーツの世界。脱・常識で挑戦する「折れない力」がスポーツでもビジネスでも勝利をもたらす。”

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