【スポーツ成長法則 vol.5】 <後編>アスリートがビジネスで勝つ法則。マインドセットを変えて爆速成長するTENTIAL/中西 裕太郎

PROFILE

なかにし・ゆうたろう
株式会社TENTIAL代表取締役CEO。
埼玉県出身。高校時代はサッカーでインターハイに出場。心疾患のためプロを断念し、プログラミング学習サービス「WEBCAMP」を手掛けるインフラトップの創業メンバーとして参画。リクルートで新規サービスの事業開発を経て、2018年2月にTENTIALを創業。

スポーツが持つ「人を育むチカラ」を経営者に聞く「スポーツ成長法則」。第5回目は、株式会社TENTIAL(テンシャル)代表取締役CEO中西裕太郎(なかにし・ゆうたろう)さんです。中西さんは「土俵の上で勝つことに集中する力は、スポーツもビジネスも同じ。でもマインドセットを変えないと」といいます。そんな中西さんの原動力は「スポーツで頑張った経験が還元されないフラストレーション」だったそうです。いったいどんな経験がビジネスの世界へといかされていったのでしょうか。

文=鶴岡優子(@tsuruoka_yuko

 

心臓の病気でサッカーを断念。遺書を書いた日

高3のインターハイが終わり、進路を決める夏頃、中西さんは急な病に倒れる。動悸がするようになり、走れなくなってしまった。異変を感じ病院に行っても原因がわからず、病院を転々と回されてしまう。そして、たどり着いたある病院で、緊急入院を言い渡された。心臓の血管がつまってしまう病気だと、診断された。

1ヶ月ほど検査のための入退院を繰り返した後、カテーテルの手術を行った。これから自分はどうなってしまうのかと不安で、手術の前の日、泣きながら遺書を書いた。手術は無事成功したものの、激しい運動は禁止され、3ヶ月間はサッカーができない日々が続く。

高校を卒業したらプロサッカー選手になりたい、という夢が少しずつ遠のいていった。同じサッカー部の仲間がJリーグや大学の練習会に呼ばれたという話を聞いては、やるせない気持ちになった。当時のサッカーの仲間はみな優秀で、サッカーだけでなく受験勉強も熱心だった。

「今から思えば、サッカーができないなら勉強していい大学に行こうと切り替えていればよかったんですが、そこから逃げていたんです。俺は病気だから仕方がないんだと」

高3の卒業前に両親が離婚した。それすらも自分のせいではないか、と思い、夜になると急に不安がこみ上げてきた。春になると、サッカー部の仲間の多くが大学へ進学した。いい大学に入り、遊んでいる仲間がキラキラして見えて、とにかく悔しかった。

グレてやろう、と思ったこともあった。しかし、強いコンプレックスが中西さんを救う。自分よりできないと思っていたやつが、自分よりいい大学に行って楽しそうにしている。

「とにかく悔しい、負けたくない。このままじゃいけない、と気付きました」

 

世の中を変える側へ。起業家になるため武者修行

大学に行った仲間に勝つためには、起業して世の中を変える側に回るくらいでないとダメだと考えた。そんな時、オバマ前大統領の「プログラミングを学べば人生が変わる」という演説を偶然観た。父親がITの仕事をしていた影響もあり、まずはプログラミングを学ぶことにした。

その後、プログラミング学習サービス「WEBCAMP」に、創業メンバーとして参画することになった。これが中西さんにとってのファーストキャリアだ。インフラトップではスタートアップとはどのようなものか、資金調達の仕組みなどを学んだ。

しかし、大きな組織を動かす力、大人をコントロールする力が足りていないことに気づき、武者修行のためにリクルートに中途入社する。

「高卒でまだ21歳だったのですが、たまたま声をかけたリクルートの方に興味持ってもらって、当時最年少正社員として中途入社させてもらったんです。リクルートでは新規事業開発や財務戦略などを学ばせてもらいました」

 

アスリートの可能性を最大化。TENTIALが目指す世界

リクルートでの武者修行を終え、2018年2月にTENTIALの前身となるアスポールを起業した。

「何の分野で起業するか考えたとき、自分が一番興味があり、理解もしているスポーツの領域がいいと思った。スポーツをやっていた人でも、その後くすぶっている人もいます。アスリートの可能性をもっと引き上げたかったんです」

最初はアスリートの知見を活かしたスポーツメディア『SPOSHIRU』を立ち上げた。しかし、NIKEやアシックスなどはモノを作るメーカーだ。TENTIALの事業を成長させ、スポーツ業界に対してバリューを発揮するためにはメーカーの道に進もうと考えた。インソールに着目し、D2Cで売上を伸ばすことになったのは前述の通りだ。

テンシャルで働く社員の90%はアスリートだ。クチコミで自然と集まってくるという社員は、インターハイ出場は普通、全国大会もざらというトップアスリートが多い。経営者からみてアスリートを雇用するメリットと難しさを中西さんに聞くと、このような答えが返ってきた。

「もし、自分がスポーツをしてこなかったら、アスリートは雇っていないと思います。日本のアスリートはスポーツに集中するあまり、勉強する時間を減らしてしまう人が多いんです。そのせいか、スポーツはできるが仕事はできないというマインドを持ってしまっていて、勝手にあきらめてしまっているんです。数字が弱い、戦略は作れないという思い込みです。海外に比べて日本のアスリートは自分を安売りしすぎていると思います。そこがものすごくもったいない」

テンシャルに入ったアスリートは、中西さんからビジネスパーソンとしてのマインドセットを教わるという。組織づくりはNetflix、リクルートを参考に「個人の成長を伸ばす」ことを意識している。情報はオープンで、みんなが同じ目線で判断できるようにしている。顧客の為には勝てるやつが試合に出るべきだ、という共通価値観も徹底している。数字はもちろんだが、顧客のために、社会のために働く。それが、企業文化として育まれていくと中西さんはいう。

TENTIALはこの冬、ゴルフ用インソールを発売した。ショット時に前傾姿勢を維持するために、かかと部分の厚さは約2mm に設計されている。足指に力が入り、正しいアドレスに矯正でき、ボールは左右にバラつかなくなるという。ゴルファーにも人気で、好調な売れ行きだ。アスリートの経験を活かし、身体の可能性を最大限引き出すTENTIALブランドは、2021年も爆速で成長していくに違いない。彼らが上場し、アスリートがずらっと並んで東証の鐘を鳴らす。そんな場面を心待ちにしていたい。

社員の90%がアスリートという株式会社TENTIALの社員と中西さん(中央・左から6番目)。中西さんにビジネスのマインドセットを教わり、チームとして最大限のパワーを発揮していく。

 

 

株式会社TENTIAL代表取締役CEO中西裕太郎さんが考える
スポーツが持つ「人を育むチカラ」とはー
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”ビジネスはスポーツと同じ勝ち負けの世界。土俵の上で勝つことに集中する力はスポーツとビジネスに通じる力。経営者になった自分の役割は企業を勝利に導くために考えて努力するだけ。アスリートのマインドセットを変えて、チームで勝利をつかみたい。”

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