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【♯07】塚本亮│干渉しないことで育つ子どものチカラ

子どもの成長のために、良かれと思って言っていることが実はマイナスに働いていたり、「育てよう」と強く思うほど、「育たない」ことにつながる。そんな悩みをみなさんお持ちなのではないでしょうか? 『すぐやる人とやれない人の習慣』(シリーズ40万部突破)の著者であり、心理学に基づいた指導法で教育コンサルタント、メンタルトレーナー、心理カウンセラーとして活躍する塚本亮さんが、子どもの「心」を強くするための習慣ついて連載でお届けします。

文=塚本 亮

 

昨今、子育てにおいて干渉しすぎないことが大切であるとされています。しかし、そうは言っても具体的にどういうシーンを指すのでしょうか。たいてい大人が子どもに干渉したくなる時というのはイラっとする時や心配になる時、なのではないでしょうか。私も日々子どもたちと接していて、マイナスに感情のスイッチが入った時はついつい干渉したくなってしまいます。

 

でも「長い目で見た時にそれが子どもたちにとってプラスになるのかな?」

 

そんな問いを自分に投げかけることの連続です。そこで今回は、子どもへの干渉の持つ影響を2つのシーンからお伝えできればと思っています。

 

その1 ぼーっとしている時間に創造力が育まれる

まず1つ目。

 

「ぼーっとしてないで早く宿題をしなさい」

「ぼーっとテレビ観てないで早くお風呂に入りなさい」

 

ぼーっとしている子どもが目に入ると、このような言葉をかけてはいないでしょうか。実は私たちが起きている時間の46.9%はぼーっとしている時間であるということがハーバード大学のリサーチによって報告されています。

 

約半分の時間、脳はぼーっとした状態にあるということなのです。これは驚きの結果ですね。

 

ではこのぼーっとしている時間はムダな時間なのかというと実はそうではないということも報告されていて、ぼーっとしている時間にこそ創造力が育まれていると言われています。

 

ジョージア工科大学の2017年の研究では、頻繁にぼーっとする人々は、知的能力と創造力について高いスコアを獲得したことを示しています。実際、MRIで測定したところ、彼らの脳はより効率的に働いていることがわかっています。

 

脳は私たちが1日に消費する全エネルギーの20%を使います。さらに、この脳の消費エネルギーの60~80%が、脳がアイドリング状態、つまりぼーっとしている時に使われています。この脳回路はデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれていて、さまざまな脳領域の活動を統括する役割を担っているのです。

 

学校生活やスポーツスクールなどの習い事などでは私たちが想像する以上に子どもたちはたくさんの刺激を受けていて、頭の中の整理を必要としています。DMNが、私たちの脳の中に散らばる情報や記憶を整理したり、つなぎ合わせたりします。そしてぼーっとしている時間が創造力を育てることにつながっていると考えられているのです。

 

もちろんスポーツの試合中や忙しい時などぼーっとするとマズい時はありますが、子どもの自由な創造力を伸ばすためには、なにもせずぼんやりしている時間のような、一見無駄のように思える時間がとても大事な時間なのかもしれませんね。家でぼーっとしている時はそっとしてみるというのも1つの選択肢だと言えます。

 

その2 沈黙を奪わないこと

もう1つ、子どもから奪ってはいけないのが返答するまでの時間です。

 

「今日、夜ご飯何にする?」

 

という質問した時に「うーん」となるでしょう。その時に

「ハンバーグ?カレーにする?」

と子どもが自分の意見を口にするまでに先に選択肢を絞り込んだりしていないでしょうか。

 

また、

「〇〇くんは週末どこか行ってきたの?」

と先生に尋ねられて

「うーん」

となっている時に

「〇〇動物園だよね!」

とすかさず横から答えを奪っていないでしょうか。

 

「それくらいさらっと答えてよ」と思う気持ちはよくわかりますが

 

私は子ども向けのサッカースクールを京都で開催していますが、子どもが対して話さなくても済む状況を作り出してしまっているようなシーンを見かけることは少なくありません。大人が子どもが言おうとしていることを察して先取りしてしまっている状況だなと感じます。

 

こうなるとますます話さなくてもよくなってしまって子どもの話す力、考える力は育たなくなってしまいます。もちろん、沈黙は誰でも嫌なんです。沈黙って怖いじゃないですか。でもそこで誰かが手を差し伸べることが当たり前になってしまうと、子どもにとっては話さなくてもなんとかなってしまうというのが身に染みついてしまいます。

 

大人は忙しいし、早く話をして沈黙を解消してほしいし、早く何かを決めてしまいたい気持ちはとてもよくわかります。ただ、話さなくていい環境を作ってしまうことで、子どものコミュニケーション力は育たないということを理解していただくことも大切ですね。

 

いずれにおいても大事なのは、長期的な視点に立って子どもの成長を見守るかということだと思います。今回お伝えしたかったことは、目の前のシーンだけ切り取るとイラッとすることだったり、心配することだったりだったのではないでしょうか。だからこそ、目の前で起こっている、大人の視点からすると「大丈夫なの?」と感じるシーンの捉え方に焦点を当てて見ました。

 

いやいや、なかなか忍耐が必要ですね。そう、なんとかしなければならないという思いが逆効果であることがたくさんあります。子どもたちが早い段階で失敗する機会を奪うのではなく、見守る。子どものためにと思っていることが逆に子どもから貴重な成長の機会を奪っているのかもしれない、ということなのかもしれません。

 

しかし、それだけ子どもって大人が思っている以上に力を持っているんですね。それを信じて(いやぁ大丈夫かなという思いもグッと我慢して)あげることが何より子どもの心身の成長に繋がるのではないでしょうか。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

PROFILE

つかもと・りょう
ジーエルアカデミア代表取締役、マッチャモーレ京都山城代表、同志社大学嘱託講師。高校時代、偏差値30台、退学寸前の問題児から一念発起し、同志社大学に現役合格。卒業後、ケンブリッジ大学大学院で心理学を学び修士課程修了。帰国後、京都にてグローバルリーダー育成を専門とした「ジーエルアカデミア」を設立。心理学に基づいた指導法が注目され、国内外の教育機関や企業、トップアスリートなど6000人に対して世界に通用する人材の育成・指導を行っている。著書は『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)など多数。新著「ヤバいモチベーション完全無欠のやる気を手にする科学的メソッド50」(価格:1,500円税抜/発行:SBクリエイティブ)発売中。

 

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